NTTドコモ無線アクセス開発部のベンジャブール・アナス氏
NTTドコモ無線アクセス開発部のベンジャブール・アナス氏
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 NTTドコモ 無線アクセス開発部 無線アクセス担当主査のベンジャブール・アナス氏は、2014年4月23日に開催された「ミリ波応用カンファレンス」(日経エレクトロニクス主催、JA共済ビル)に登壇し、「5G無線アクセスにおける“ミリ波”の活用」と題して、第5世代移動通信(5G)における高周波数帯の活用技術を解説した。

 アナス氏によると、5Gの要求条件は大きく5つあるという。現在の移動通信と比べて「通信容量は1000倍」「通信速度は10~100倍」「無線アクセスネットワーク内のレイテンシーは1ms未満」「100倍の台数のデバイスを同時接続する」、さらに「省エネで低コスト」である。これらの要求条件を満たすには、周波数の効率的利用(spectrum efficiency)、利用可能な周波数の拡張(spectrum extension)、ネットワークの高密度化(network density)といった複数技術で大きな性能改善が必要になる。

 ここで問題になるのが、4Gで採用されているLTEを継続的に進化させていくだけで5Gの要求条件をクリアできるかである。アナス氏は、「LTEの改善だけでは限界があり、ブレイクポイントとして新しい無線アクセス技術(radio access technology)が出てくるだろう」とみる。

 NTTドコモでは2010年前後から5Gを検討しており、その中で早い時期から低い周波数帯と高い周波数帯の併用をコンセプトとして提案しているという。飽和状態にある既存の周波数帯(2GHz帯や800MHz帯)では「マクロセル」を使って接続性やセル移動時のモビリティを確保したうえで、これに高い周波数帯の「スモールセル」を組み合わせて高速データレートを効率よく提供しようというものだ。NTTドコモではこうした低周波数帯と高周波数帯を組み合わせるコンセプトを「ファントムセル」と呼んでいる。

 このファントムセルのスモールセルでは、10GHz以上あるいは30GHz以上のミリ波を活用する新しい無線アクセス技術が必要になる。具体的には低周波数帯と高周波数帯の伝送路のアグリゲーション、変調方式、高周波数帯におけるMassive MIMO(multi-input multi-output)のための平面アンテナ、位相ノイズへの耐久性などを考慮しなければならないという。