講演する清水氏
講演する清水氏
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 NTT 未来ねっと研究所 第一推進プロジェクト 非接触高速コンテンツDP ディレクタの清水雅史氏は、2014年4月23日に開催された「ミリ波応用カンファレンス 無線LANから、データセンター、セキュリティー検査、自動車まで」(日経エレクトロニクス主催、JA共済ビル)に登壇し、ミリ波の新しい利用方法について講演した。講演タイトルは「ミリ波(60GHz帯)利用方法のイノベーション -非接触高速伝送技術-」である。

 清水氏はミリ波について、2.4GHz帯を用いた現行の無線LANと同様の使い方をするのは難しいとの見方を示した。その根拠として、(1)チャネル当たりの最大許容出力が10mWと小さいことなどから接続(リンク)マージンの確保が難しいこと、(2)無線チップの消費電力が2~3Wと現行の無線LANチップの約10倍大きいこと、(3)アンテナを見通し位置に設置するためにはパソコンに内蔵しなければならないこと、などを挙げた。

 これらの課題をすべて克服できるのが、ピアツーピア(P2P)での非接触高速データ伝送としての利用であるという。通信距離を1cm以内に制限することで、リンクマージンを稼げることに加え、速度保証ができ、セキュリティーも高くなるとした。具体的には、自動販売機などにおいてスマートフォンやタブレット端末などへ動画コンテンツを伝送するといった使い方を想定する。

 この利用法では、タッチ時のみ無線チップを動作させるため、現行の消費電力でも十分実用に耐えるという。さらに、パソコンではなく、スマートフォンやスマートフォンのジャケットにアンテナを実装できるようになる点もメリットだとした。

 こうした利用法はソニーなどが主導するTransferJetとコンセプトが似ているという。そこで標準化に当たっては、TransferJetで検討が進んでいるミリ波を用いた標準化を活用する可能性があるとした。