超軟質心臓シミュレーター。クロスエフェクトの社長の心臓を再現したものだという
超軟質心臓シミュレーター。クロスエフェクトの社長の心臓を再現したものだという
[画像のクリックで拡大表示]
内部構造も精密に再現している
内部構造も精密に再現している
[画像のクリックで拡大表示]
イノベーション大賞の授賞式でクロスエフェクトが表彰されている様子
イノベーション大賞の授賞式でクロスエフェクトが表彰されている様子
[画像のクリックで拡大表示]
脊椎整復フレームはレバーを回して患者の姿勢を調整する
脊椎整復フレームはレバーを回して患者の姿勢を調整する
[画像のクリックで拡大表示]
ポイントとなったフレームの曲率
ポイントとなったフレームの曲率
[画像のクリックで拡大表示]

 「MEDTEC Japan 2014」(2014年4月9~11日に東京ビッグサイトで開催)では、医療機器の設計・製造において国内企業による革新的な製品を表彰する「MEDTECイノベーション大賞」が実施され、クロスエフェクト(京都府)の「超軟質心臓シミュレーター」が大賞を受賞した。同大賞は、医療機器の設計・製造に取り組む企業を後押しする世論を喚起することなどを目的に2012年に創設されたもので、今回が3回目の開催。

 大賞の超軟質心臓シミュレーターは、患者ごとのX線CT装置の画像データを基に心臓をリアルに再現した立体模型。術前のシミュレーションや若手医師の執刀訓練などの用途に向ける。心臓の表面だけではなく、内部まで精密に再現されているのが特徴だ。

 クロスエフェクトが従来、自動車や建築、家電などの分野に向けた形状確認サンプル・機械部品サンプルの作成に利用してきた真空注型の技術を医療分野に応用した。真空注型は、真空に近い状態の槽の中で型に樹脂を流し込み樹脂製品を複製する成型加工方法。今回の超軟質心臓シミュレーターは、通常の3Dプリンターを用いて造形したマスター模型を基に、特殊なシリコーン型で複製して製作しているという。

 なお、同シミュレーターの開発に当たっては、国立循環器病研究センターの協力を得ながら進めた。

手術時の患者の姿勢を正確に調整

 MEDTECイノベーション大賞のチャレンジ賞には、メディカルネット岡山の「脊椎圧迫骨折手術で用いる脊椎アラインメントを最適化するフレーム(脊椎整復フレーム)」などが選ばれた。脊椎圧迫骨折手術は、症状によっては椎体形成術という手術で治療される。この手術では、背骨部の姿勢が手術の成否を決める重要な要素になるという。従来は、看護師などが手術台に乗っている患者の足を持ち上げ、そこにパッドを入れるなどして姿勢を微調整していた。

 これを簡易かつ正確に実施するための機器が、脊椎整復フレームである。手術台に独自形状のフレームを一体化させ、レバーを回すことでこのフレームが動き、患者の姿勢を微調整できる。既に薬事認証も取得しているという。

 脊椎整復フレームの開発は当初、瑞穂医科工業と高知大学病院の医師が進めていたが、ものづくりのノウハウを持つメディカルネット岡山に共同開発の打診があったという。そこで、設計や部品加工技術、放電加工技術などに強みを持つ企業7社が集まり、試作・設計を進めてきた。具体的には、コアテック、中原鉄工、ニッコーテック、マックエンジニアリング、田中正製作所、サンエイコーキ、中山鉄工所の7社である。

 「骨盤を回転させて椎体を適切な姿勢にできるようなフレームの曲率にしている。これが開発のポイントだ」(中原鉄工)と説明する。