登壇した国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター長の妙中義之氏
登壇した国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター長の妙中義之氏
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 国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター長の妙中義之氏は、「デジタルヘルス・サミット ~デジタルヘルスの未来2014~」(2014年3月18日、JA共催ビル、主催:日経デジタルヘルス)に登壇し、医療機器における医工連携の実態や新規事業開拓に向けた動きについて講演した。医療機器開発には民間の力を最大限に引き出すことが大事で、そのために独自で開発するのではなく、たくさんの人を巻き込むことが重要との見解を示した。

 2013年8月に「健康・医療戦略推進本部」が内閣に設置され、各省が連携して政府一体で医療分野の研究開発を推進することとなり、2014年度(平成26年度)に新しい独立法人「日本医療研究開発機構」(仮称)を設置し、1215億円の予算が付けられる予定だという。主な省庁連携施策の中に「オールジャパンでの医療機器開発」があり、文部科学省と厚生労働省、経済産業省の連携による医療ニーズに応える医療機器開発とその支援体制を整備する計画だ。

 国立循環器病研究センターでは、大阪商工会議所と2003年から医工連携推進事業を、2008年から先端医療開発特区として先端的循環器系治療機器の開発と臨床応用、製品化に関して横断的な取り組みを進めてきた。その中でニーズからアイデア、臨床、承認、製品化までをシームレスにコンソーシアムで実施することが重要だと分かったという。

 医療機器産業は、製薬とは異なり多くのメーカーが本業の延長として参画できる可能性があるが、医工連携をきちんと理解しないとうまくいかないとする。さらに妙中氏は、医学と工学が連携しても試作品止まりで本当の製品にならないと自戒の念を込めて忠告した。医工連携は医療と工業(商業)との連携であり、事業としての収益を考えて自律的に回る仕組みづくりが大事だとした。

 医療機器開発においては、すぐに試作品で検証しようとするが、事前にニーズ発掘とビジネスモデルの検討が極めて重要だと述べた。さらに、自社で全てを進めるのではなく、コンサルティング会社や金融機関、研究機関など様々な事業化アドバイザーとの連携が必要だと説いた。こうした取り組みができれば、製品化につながる確率が高まり、民間からの投資が増えて国のお金を使わなくても自主的に商品投入が相次ぐようになるとみている。

 今後の傾向としては、医療現場ではなく、健康を維持・管理するための医療サービスが生活の中に入っていくとした。技術革新によって医療機器の小型・高性能化・低価格化が進むほか、携帯機器での医療アプリの活用が始まるという。そのため、ソフトウエアを介してすべてがつながる社会が到来し、医療用ソフトウエアのビジネスが拡大するという。現在、経済産業省が事務局となり、「医療用ソフトウェアに関する研究会」が開催され、医療用ソフトウエアに関するルール作りが始まっている。2014年11月くらいには、何らかの指針が明確になるとしている。