エネルギー・ポートフォリオの多様化に向けて、再生可能エネルギーへの期待が高まっている。だが、その普及にはさまざまな障壁もある。そうした中、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)議長のRajendra Pachauri氏は、地球温暖化問題への対策として再生可能エネルギーに期待を寄せる。同氏が「第1回オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」(2014年1月14~15日、沖縄科学技術大学院大学)で行った講演の内容を2回にわたって掲載する。(構成は、高野 敦=日経テクノロジーオンライン)

 このたび、第1回オープンエネルギーシステムシンポジウムにデリーから生中継で参加することができて、非常に嬉しく思っています。どうもありがとうございます。

IPCC議長のRajendra Pachauri氏
インド・デリーから生中継で講演した

 まず、現状について確認しましょう。現在、我々は「コモンズの悲劇」あるいは「入会地の悲劇」と呼ばれる状況に直面しています。生物学者のGarrett Hardinは、1968年の時点でそのことを指摘していました。彼は、生物学者ではありましたが、ある意味では経済学者などよりもずっと先を見据えていたのです。

 コモンズの代表格である地球資源には、大変な経済価値があります。その中には、人類の生命を支えるという価値もあります。ところが、資源を利用する費用はその価値に見合っていません。すなわち、資源を利用することで環境を劣化させても痛みを感じない。そして、最終的には取り返しのつかない状態になってしまうとHardinは述べていました。

 今、同世代の中で貧富の差が広がっています。多くの人が貧困に苦しむ一方で、限られた人の富は日に日に増えています。それと同時に、我々は世代間の不公平も生み出しています。今の世代の生活を豊かにするために、将来の世代が得るべき豊かさを損なっているという問題を抱えているのです。世代間の公正という普遍的な原則を守るためにも、まずは同世代での公正を実現しなければなりません。それには、将来世代の可能性を損なうことなく持続可能な形で開発を進める必要があるのです。