Orange社などが開発した無線通信機器向け太陽電池モジュールの概要
Orange社などが開発した無線通信機器向け太陽電池モジュールの概要
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 「第1回オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」(2014年1月14~15日、沖縄科学技術大学院大学)では、フランスの大手通信会社であるOrange社(旧France Telecom社)の非電化地域に向けた戦略が紹介された。研究開発関連会社であるOrange Labs Networks社のThomas Rivera氏が講演したもので、無線通信機器に小型の太陽電池を組み合わせて自立性の高いM2Mネットワークを構築することで、非電化地域でもさまざまなサービスを提供できるようになるという。

 Orange社は、お膝元の欧州にとどまらず、アフリカや中東といった新興国で携帯電話事業やショート・メッセージ・サービス(SMS)によるモバイル決済事業を展開している。その同社が次の成長エンジンとして位置付けているのは、新興国の中でも商用電力が供給されていない地域、すなわち非電化地域だ。非電化地域でも携帯電話やモバイル決済のサービスを利用可能にして、市場を一気に拡大しようというわけである。「通信会社として機器メーカーに非電化地域向けソリューションの開発を促す狙いもある」(Rivera氏)。

 携帯電話やモバイル決済のような無線通信サービスを非電化地域で提供するためには、商用電源以外の電源が必要になる。そこで同社は、太陽電池に目を付けた。無線通信機器に小型の太陽電池を搭載することで、電源を確保するのだ。「無線通信機器の寿命はだいたい10~15年なので、(一般に寿命が20年といわれる)太陽電池は恐らく発電し続けられる」(Rivera氏)。Orange社がパートナーの企業や研究機関などと共同で開発した太陽電池モジュールは、出力が25mWと500mWの2タイプで、機器の用途や性能などに応じて使い分ける構想だ。これらの太陽電池モジュールについて、フランスのカーニュ・シュル・メールおよびニースに設けたM2Mネットワークで実証実験を行っている。

 Orange社は現在、商用電源を確保できない場所で稼働する無線通信機器の電源に一次電池を用いている。こうした用途にも新開発の太陽電池モジュールを使えば、電力を確保しやすくなるので、M2Mネットワークにおいてデータを収集する頻度を高めたり収集するデータの種類を増やしたりできるようになるという。