インドのデリーから生中継で講演したRajendra Pachauri氏
インドのデリーから生中継で講演したRajendra Pachauri氏
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 分散型エネルギーについて議論する「第1回オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」(2014年1月14~15日、沖縄科学技術大学院大学)では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の議長であるRajendra Pachauri氏が「気候変動とエネルギーの選択」と題して講演を行った。同氏は、地球温暖化によるさまざまな影響を緩和するための方策として、再生可能エネルギーの利用を推進すべきだと主張した。

 講演の冒頭で、Pachauri氏は「コモンズの悲劇」によって地球環境が傷付けられていることを指摘した。コモンズの悲劇とは、不特定多数が利用できる共有資源において利用に制限を設けない場合、乱獲によって資源そのものが枯渇するという経済学上の法則である。IPCCの調査対象である地球温暖化も、直接的な要因は温室効果ガス排出量の増加だが、その温室効果ガスを生み出す要因として大きいのは石油や石炭といった資源の利用であり、基本的にはコモンズの悲劇で説明できるという。

 地球温暖化は、自然災害や食糧不足、健康被害など多くの問題を引き起こす恐れがある。こうした問題を防ぐには、化石燃料の利用に適切なコストを設定して化石燃料への依存度を下げるとともに、再生可能エネルギーの利用を推進する必要があると、Pachauri氏は語る。「再生可能エネルギーは、条件によっては非常に魅力的なエネルギーであり、市場も既に存在しているのだから、どんどん利用すべきだ」(同氏)。

 さらに、Pachauri氏は途上国向けソリューションの開発に期待を寄せた。その1つとして同氏が紹介したのは、途上国の非電化地域において太陽電池で発電して各家庭でLEDランプを使えるようにするプロジェクトである。「再生可能エネルギーという新しい技術によって、途上国の人々により豊かな生活を提供するための方策をぜひ考えてほしい」(同氏)。