研究に用いられている住宅施設。本来はOISTの教員住宅である。
研究に用いられている住宅施設。本来はOISTの教員住宅である。
[画像のクリックで拡大表示]
屋根に太陽電池パネルが設置されている。出力が233Wのパネルを6枚組み合わせて1セットとし、部屋の大きさに応じて2または3セット設置している。
屋根に太陽電池パネルが設置されている。出力が233Wのパネルを6枚組み合わせて1セットとし、部屋の大きさに応じて2または3セット設置している。
[画像のクリックで拡大表示]
電池パックやコントローラ、DC-DCコンバータを収納したケース。
電池パックやコントローラ、DC-DCコンバータを収納したケース。
[画像のクリックで拡大表示]
電力の融通に用いる自営線。
電力の融通に用いる自営線。
[画像のクリックで拡大表示]

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)で開催された「第1回オープンエネルギーシステム国際シンポジウム」(2014年1月14~15日)では、太陽電池や蓄電池などから成る分散電源システムを備えた住宅施設が参加者向けに公開された。ソニーコンピュータサイエンス研究所やOIST、沖創工などが研究を進めているもので、直流電力によって住宅間で電力を融通し合えるのが特徴だ(関連記事)。

 この「オープンエネルギーシステム(OES)を実現する分散型DC電力制御に関する実証的研究」では、OISTの敷地内にある教員住宅9棟〔2LDK(105m2)タイプが5棟、3LDKタイプ(148m2)が4棟〕に太陽電池パネルや蓄電池、コントローラーなどを設置した。太陽電池パネルは出力が223Wのものでパナソニック製。パネル6枚を1セットとし、2LDKの住宅に2セット(合計出力は約2.7kW)、3LDKの住宅に3セット(同約4.0kW)取り付けた。蓄電池は、正極材にオリビン型リン酸鉄リチウムを用いたリチウムイオン二次電池でソニー製。エネルギー容量が1.2kWhのパックを3個ずつ設置した。太陽電池パネルが発電する電力の電圧は180Vで、これをDC-DCコンバータによって48Vに降圧した上で蓄電池に充電する。

 9棟のうち3棟は自営線で直接接続されており、蓄電池の電力を相互に融通し合える。受送電に用いる電圧は340~350Vで、DC-DCコンバータによって蓄電池の電力を昇圧している。その場合は、送電側の電圧をリファレンス電圧よりも少しだけ高くすることで受電側に電力を送っている。受送電の制御部に遮断器を搭載することによって安全性を確保しているという。「双方向に直流電力を送れることを、実際の住環境で実証できた」(ソニーCSLエグゼクティブ アドバイザー、ファウンダーの所眞理雄氏)。2014年度は、研究対象を20棟に拡大する。さらに、現在は電力の融通を手動で行っているが、今後は各棟の電力需要や充電量などに応じて自律的に行えるようにする予定だ。そのためのアルゴリズムを開発することが課題だという。