シャープのブースで展示されたDolbyVisionの映像(左)。
シャープのブースで展示されたDolbyVisionの映像(左)。
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 米Dolby Laboratories社は以前からHDR(ハイダイナミックレンジ)技術を展開し、既に、HDR内蔵のマスターモニターも販売している。HDRは、ダイナミックレンジを黒方向と白方向に拡張する技術である。Dolby社はこれまで、「直下型LEDバックライトとローカルディミンング」を活用したディスプレイでのダイナミックレンジ拡大を主に訴えていた。これに対し、今回の「International CES」では「DolbyVision」というブランド名で、エンコード・デコードの相補性の関係を踏まえ、HDRとハイビットを中核に、色再現も含めた総合的な4K画質改善に挑戦するという意欲的なプログラムを発表した。

 まずコンテンツ制作でのマスタリングやカラーグレーディングを、DolbyVisionの定めたプロシージャーで行う。具体的には、ハイビット、広色域の信号をまず作成し、そこから現在のフルHD(4Kも)の規格(BT709など)に合致したコア部分と差分のエンハンス部分に分けて、ネットワークや放送によって伝送する。信号を受け取ったDolbyVision対応テレビ側では、「直下型LEDバックライトとローカルディミンング」をハードウエアとして搭載し、その上でコア部分と差分のエンハンス部分を統合してデコードする。フルHD(または4K)のハイビット、HDR、ハイカラー信号を再合成し、そしてテレビのディスプレイ性能に応じて最適マッピングする――というプロセスだ。

 DolbyVision非対応のテレビでは、従来の狭帯域の映像が表示される。コンテンツ側の高情報量が、そのまま忠実に再生できるのがDolbyVisionのメリットだ。Dolby社が得意なエンド・ツー・エンドのソリューションである。

 ハードウエアメーカーとしては既に、シャープと中国TCL社がサポートを表明している。コンテンツおよび配信側では、米Microsoft社が「Xbox Video」、米Amazon.com社が「Amazon Instant Video」、米Netflix社が「VUDU」で参入を表明している。シャープの道川直幸氏(デジタル情報家電事業本部 副本部長)がこう言った。「もともと直下型LEDバックライトとローカルディミンングは、米国向け高級テレビの『エリートシリーズ』で採用していました。DolbyさんからDolbyVisionのお話をいただいた時、コンテンツとサービスで、より制作者の意図に沿った映像表現ができるプログラムとして採用することに決めました。2014年後半以降に商品化の予定です」(道川氏)。