トランジスタ性能が向上
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16nm世代プロセスの概要
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7層のメタル配線
7層のメタル配線
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SRAMの特性
SRAMの特性
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 台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.)は、2013年末までに少量生産(リスク量産)を始める16nm世代のプロセス技術を発表した(講演番号9.1)。モバイル機器やコンピューティング機器用のSoC(system on a chip)向けで、同社として初めて立体トランジスタ(FinFET)を導入した。28nm世代プロセス(high-kゲート絶縁膜/メタル・ゲート版)に比べてトランジスタの集積密度は2倍に高まり、トランジスタの動作速度を35%向上または消費電力を55%低減できるという。

 TSMCは現在、20nm世代プロセス(20SOC)をリスク量産中で、続く16nm世代プロセスについても近くリスク量産を始める。16nm世代プロセスではSRAMやリングオシレータ、さらには英ARM社のプロセサ・コア「Cortex-A57」を載せたテスト・チップを試作済みである。今回の講演ではこのうち、プロセス技術やトランジスタ特性、SRAMの試作結果などを示した。

 16nm世代プロセスは、20nm世代プロセスのメタル配線技術(BEOL)を踏襲しつつ、平面トランジスタをFinFETで置き換えた構造を採る。FinFETには28nm世代と同様のゲート・ラスト(replacement gate)方式のhigh-kゲート絶縁膜/メタル・ゲートを組み合わせる。7層のCu-low-k配線を採用し、第1メタル配線のハーフピッチは32nm。フィン・ピッチは48nmで、ゲート長は30nmと34nm、50nmの3通りを用意する。第1メタル配線のパターニングにはダブル・パターニング技術を、フィンの形成にはピッチ分割技術(pitch-splitting technique)をそれぞれ用いた。

 試作した低リーク版トランジスタ(ゲート長34nm)のオン電流は、電源電圧0.75V、オフ・リーク電流30pA/μmの条件でnMOSが520μA/μm、pMOSが525μA/μm。短チャネル特性はDIBL(drain induced barrier lowering)が30mV/V未満と良好である。特性ばらつきにも強く、ばらつきの指標となるAVt値は28nm世代プロセスと比べてnMOSで36%改善し、pMOSで24%改善した。

 加えて、128MビットSRAMを試作し、高い歩留まりで完全動作することを確認している。トランジスタ当たり1個だけのフィンを使う高密度版SRAMは、セル面積が0.7μm2、電源電圧0.6Vの条件で120mVのSNM(static noise margin)を確保した。SRAMの最小駆動電圧は、平面トランジスタを用いる場合に比べて220mV低減できたとする。試作したSRAMのチップ写真は論文には掲載せず、講演のスライド資料でのみ披露した。