開発したメモリ・セルの断面
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ビット線間の干渉特性
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繰り返し書き換え特性
繰り返し書き換え特性
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しきい値電圧の分布
しきい値電圧の分布
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 韓国SK Hynix社は、“Middle-1X”(M1X)nm世代をうたう多値NANDフラッシュ・メモリ技術を発表した(講演番号3.6)。2013年11月に本格量産を開始した16nm世代技術の詳細を明らかにした形だ(関連記事1)。ビット線方向(ワード線間)に加えてワード線方向(ビット線間)にもエアギャップを導入するとともに、制御ゲートと浮遊ゲートを高濃度にp型ドープする構造を新たに採用した。これにより、メモリ・セル間の干渉を抑えるなどして高い量産性を確保したとする。

 SK Hynix社はM1Xnm世代の基盤技術を2年前の「IEDM 2011」で発表済みである(関連記事2)。同技術では、ワード線方向については浮遊ゲートの幅を細らせることで制御ゲートを埋め込むスペースを広げた。これにより、制御ゲートに空孔が生じて空乏化し、ビット線間の干渉が増加する現象を抑えている。ビット線方向については、エアギャップの体積を大きくしてデータ書き込み時に制御ゲートとその隣の浮遊ゲートの間に加わる電界を緩和し、浮遊ゲートからの電荷漏れを防いだ。今回はこれらの技術を踏襲しつつ、新たに二つの改良を加えた。

 第1に、ワード線方向にもエアギャップを導入し、ビット線間の干渉を抑えた。これにより、ビット線間の干渉は従来のM1Xnm世代技術の約1/3となり、2Ynm世代と比べても半減した。ここで、エアギャップの体積を大きくするほどビット線間干渉を抑えやすいが、トンネル絶縁膜にダメージを生じやすくなるというトレードオフがある。これを考慮してエアギャップの体積を最適に制御した。

 第2に、2Ynm世代ではn型ドープしていた制御ゲートと浮遊ゲートを、高濃度にp型ドープする構造に変えた。これにより、データ読み出し時に隣接するワード線に加えた電圧の影響を受けて、しきい値電圧が変動してしまう現象を抑えた。高濃度にp型ドープすることでゲートの空乏化を抑えられるため、隣接するワード線からの影響を抑えやすくなるという。この改善により、2Ynm世代と同等以上の繰り返し書き換え特性(endurance)とデータ保持特性(retention)が得られた。