基調講演の様子
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参加者数の推移
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会場のWashington Hilton
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 半導体デバイス技術に関する国際会議「International Electron Devices Meeting(IEDM)2013」(2013年12月9~11日、米国ワシントンD.C.)が米国時間の2013年12月9日に開幕した。LateNewsを除く投稿論文数は564件であり、前回ワシントンD.C.で開催された「IEDM 2011」の533件を上回った。564件の論文のうち、370件が大学、146件が産業界、48件が研究機関による投稿である。採択論文数は215件で、採択率は約38%。参加者数は12月8日(日)夕方時点の登録者数が1291人。最終的にIEDM 2011と同等規模の約1440人の参加を見込む。

 初日の午前中は「グラフェン」「3DIC」「モバイルSoC」に関する3件の基調講演があった。英University of Cambridgeは「Graphene Future Emerging Technology」と題してグラフェンの可能性を紹介した(講演番号1.1)。グラフェンは炭素(C)原子が2次元的に配列した構造であり、単原子層のために非常に薄く、機械的に強靭で、伸縮性がある。さらに優れた光学的特性や高い移動度を持つことから、透明かつフレキシブル、伸縮可能なデバイスにつながると期待されている。

 グラフェンを用いたFETの報告は、2012年ころから集積FET数が指数関数的に増えており、これを「グラフェン版のムーアの法則」として紹介した。現在はグラフェンFETでリング発振器を形成できるレベルに達している。グラフェンFETで形成したインバータの場合、遅延時間はSi製インバータと同等レベルである。ただし、グラフェンFETではゲート絶縁膜のスケーリングなど、まだまだ課題が多いという。

 University of Cambridgeはグラフェンのような2次元的な構造を持つ材料を積み重ねることで、センサや太陽電池、トランジスタなどを集積化するアイデアについても紹介した。「2次元マテリアル・ベースのエレクトロニクス」と呼んでいる。半導体材料としてグラフェンやMoS2、絶縁材料としてBNなどを利用する。MoS2を用いたTFTは移動度が100cm2/Vs、オン/オフ比が108と高い。

3DICの時代へ

 2件目の基調講演は、東北大学 教授の小柳光正氏による「Heterogeneous 3D Integration - Technology Enabler toward Future Super-Chip」である。2次元(プレーナ)構造のICは現在10nm台の壁に差し掛かっており、今後は3次元構造のIC(3DIC)が必要と考えられている。小柳氏らは1978年のIEDMでスタック構造のキャパシタを用いたDRAMを発表し、その後のDRAMキャパシタ構造の3次元化に道を開いた。同氏はTSV(Si貫通ビア)を用いた3DICに関しても1989年に発表している。

 3DICは東芝やソニーのCMOSイメージ・センサ、米Micron Technology社の「Hybrid Memory Cube(HMC)」で実用化されているほか、韓国Samsung Electronics社をはじめとするDRAMメーカーがWide I/O DRAMとして開発を進めている。また、米Xilinx社はSiインターポーザ上に複数のチップを集積した2.5次元(2.5D)ICを量産中である。調査会社の予測によると、こうした3D/2.5D ICの市場は2015年以降、大きく伸びるとみられる。

 東北大学では種類の異なるチップを3次元的に集積するヘテロジニアス3DICの開発を進めている。独自のキャリア・ウエハー上に種類の異なるKGD(known-good die)を載せて、これをウエハー単位で積層接続する。そのために、液体の表面張力を利用してチップの位置合わせを行い、静電力で固定する「self-assembly and electrostatic(SAE)」と呼ぶ技術を開発済みである。こうした技術を利用して3DICを試作する「GINTI」と呼ぶ施設についても紹介した(関連記事)。