講演の様子
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 ニコン 代表取締役 兼 副社長執行役員 精機カンパニープレジデントの牛田一雄氏は、「SEMICON Japan 2013」(2013年12月4~6日、幕張メッセ)で開催された「450mmエグゼクティブフォーラム」に登壇した。「Innovative Lithography Solutions for the 450mm Transition」と題し、450mmウエハー対応の露光装置への取り組みや、450mmへの移行に際して必要な業界内連携について述べた。

 牛田氏は「SEMICON Japan 2012」において、ニコンがパイロット生産用の450mm対応露光装置を2015年に出荷し、量産用装置を2017年に出荷するという計画を公表。「既に(300mmで)実績のあるArF液浸露光装置で対応することを決定済み」(牛田氏)である。それから1年を経た今、450mm対応装置の開発は「既に決意表明の段階ではなく、開発プログラムが実際に始動している」(牛田氏)。450mmウエハーへの大口径化は、Mooreの法則を維持し、チップ当たり年間30%のコスト低減を持続していくためには欠かせないと同氏は主張する。300mmへの大口径化に際してオランダASML社がツイン・ステージ技術を導入してスループットを一挙に高めたことに触れ、大口径化は「単にウエハー径を大きくするだけでなく、革新的な装置技術を生みだす契機ともなる」(同氏)と話した。

 ニコンの試算によれば、450mmへの移行に伴って半導体業界が負担しなければならない投資額は総額140億米ドル(約1兆4000億円)に達する見通し。これは300mmへの移行に伴う総投資額120億米ドル(約1兆2000億円)に近い水準である。300mmへの移行では業界の足並みがそろわなかったために投資効率が悪く、200mmへの移行に比べて9倍もの投資額が必要になったという。450mmへの移行ではこの反省を踏まえて「半導体メーカーと装置メーカー、コンソーシアムが足並みをそろえるべき」(牛田氏)とした。

 投資総額を140億米ドルに抑えられた場合、装置メーカーの年間売上高が平均3.8%のペースで増え続けたと仮定すると、装置メーカー側の投資回収期間は約22年になる見込みという。300mm対応装置への投資回収には約20年を要したといい、これに近い時間を要することになる。牛田氏は、必要な投資額や回収期間の観点から、450mmへの大口径化はジェット旅客機「Boeing 787」に近いとの分析結果を披露。「Boeing 787の開発を(経済性の点から)成功だと評価するなら、450mmへの大口径化も経済性の点で意味あるものにできるはず」(同氏)だと述べた。