2025年、ネットにつながるデバイスは1兆個へ
2025年、ネットにつながるデバイスは1兆個へ
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 アーム 代表取締役社長の内海弦氏は「SEMICON Japan 2013」(2013年12月4~6日、幕張メッセ)の会期初日に開催された「SEMIマーケットセミナー 2014年は黄金の年になるのか?」で「Connecting Intelligence to reshape the future lifestyle」と題して講演した。

 英ARM社は1990年設立のIPコア・ベンダー。現在、スマートフォンやタブレット端末のプロセサ・コアとしては95%以上のシェアを誇る同社だが、会社設立当初はIPコアをライセンス販売するという事業モデルが顧客になかなか受け入れられず、苦労したという。同社は非常に長いタイムスパンを前提に事業を展開しており、同じプロセサ・コアが20年以上使われることを想定している。例えば、スマートフォン向けに2007年から使われている「Cortex-A9」は現在でも多く利用されており、今後も長期間に渡って使われる見通しである。

 現在、350社の顧客に対し、1000ライセンス以上を販売している。ARMコアの累計出荷個数は2002年の10億個から2012年に350億個に増えた。年間80億個のARMコア搭載チップが出荷されている。このペースで増え続ければ、2020年には累計出荷個数は1500億個に達する見込みだ。ただし、同社の売上高は1000億円に達しないレベルである。IPコアの設計・開発に特化し、徹底的に水平分業化を進めているため、売上規模は大きくない。機器メーカーや半導体メーカー、EDAベンダー、ソフトウエア・ベンダーなどのパートナーと協業しながら、IPコアのライセンス料と、チップの出荷量に応じたロイヤルティーで収益を上げている。

 スマホ・タブレット向けのアプリケーション・プロセサで高いシェアを持つ同社は現在、産業機器向けのマイコンや、データセンターで利用するサーバー機向けのプロセサ・コアを積極的に売り込んでいる。IoT(internet of things)などを背景に、こうした分野が急速に伸びると見ているためだ。また、特にサーバー機では消費電力の削減が大きなテーマになっており、低電力のARMコアを利用することで、サーバー機の消費電力を2/3~1/2に低減できるとする。

 プロセサ・コアの市場は今後も拡大が続く。ネットにつながるデバイスの数は2007年には7億個だったが、2020年には500億個、2025年には1兆個に拡大する見通しだ。これまでつながっていなかったものをネットに接続し、そこから得られる情報を活用して人々の生活を豊かにするためには、高性能かつ低電力のARMコアがますます必要になるという。例えば、干ばつが起きている地域の情報を農業に活かす取り組みは既に始まっている。伝染病の広がりを示す情報を役立てる動きも今後本格化しそうだ。さまざまな照明機器や住宅、ビルなどにも多くのマイコンが必要になる。カメラで捉えた温度計の画像をクラウドで処理し、室内の温度を認識するといったことも行われるようになる。