10月23~25日にパシフィコ横浜で開催されたディスプレイの展示会「FPD International 2013」の併催フォーラムを、この分野に詳しい識者に聴講、報告してもらった。以降では、液晶ディスプレイ産業の草創期から技術者としてこの分野に携わり、現在はコンサルティング業を営むICTマーケティング研究所の越後博幸氏が聴講した、「HMD、普及の条件」と題したセッションのレポートを紹介する。(田中 直樹=日経エレクトロニクス)

 “ポストスマホ”として世間の注目を浴びている“ウエアラブル端末”について、神戸大学大学院 教授の塚本昌彦氏がヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)を中心に講演した。塚本氏は十数年前から「ウエアラブル端末の時代が来る」と確信して自らHMDの実物を装着し続けてきた方であり、その強い思いがひしひしと筆者を含め聴講者に伝わってきた。

 実は、筆者もスマートフォン(スマホ)の次は絶対にウエアラブル端末の時代が来ると予測し、期待もしていた。商品像はHMD(眼鏡型)に限らず、時計型や衣類埋め込み型なども含めて、人の体に端末を装着する使い方は今後広く採用されると確信していた。筆者は、この現象は至極当然の流れと理解している。つまり、「携帯電話機→スマホ→ウエアラブル」というインタラクティブなコミュニケーションのための端末の変遷は必然と思う。

 塚本氏の講演の流れは、HMDの歴史的経緯、各社からの発表製品、商品化のポイント、課題、製品分類、要求事項、応用製品の広がり、そして最後は普及の条件でまとめていた。同氏は普及の条件を議論する上でのポイントとして、(1)「Google Glass」は成功か失敗か?、(2)強力な競合製品の出現が必須、(3)市場から受け入れられるためのハードルが多々あること(仕様、デザイン、安全性、コンテンツなど)、の3点を挙げた。十分納得できる内容だと思う。

 世界のIT企業が次々とHMD製品を発表しており、今後の動向が非常に注目される。どのような製品がお目見えするか、非常に楽しみである。