10月23~25日にパシフィコ横浜で開催されたディスプレイの展示会「FPD International 2013」を、この分野に詳しい識者に見学、報告してもらった。以降では、液晶ディスプレイ産業の草創期から技術者としてこの分野に携わり、現在はコンサルティング業を営むICTマーケティング研究所の越後博幸氏のレポートを紹介する。(田中 直樹=日経エレクトロニクス)

 今回の「FPD International 2013」で最も話題になった展示ブースは、ジャパンディスプレイ(JDI)であることに異論は無いと思う。東芝、日立製作所、ソニーの3社の中小型液晶パネル部門を統合し、事業を開始してから1年半が過ぎたが、やっと経営と事業の基盤が固まり、安定感が出てきたと筆者は感じた。

 基礎技術に裏付けされた新規ディスプレイの提案や、モバイルを主体に車載機器、医療機器、カメラなどの民生機器という集中すべきアプリケーションの明確化、茂原工場の低温多結晶Si(LTPS)TFTラインへの転換による生産拠点の拡大と生産基盤の安定、さらには台湾へのビジネス拠点の設置による海外展開など、着実に事業基盤を構築していると感じた。特に技術の視点で見ると、LTPS、IPS液晶、白を導入した画素配列「WhiteMagic」、インセル方式「Pixel Eyes」の四つの技術を基にして、超高精細化、総合的な画質の向上、省電力化、反射カラー液晶の性能改善をリードしている。

 今回は特に、二つの展示品に筆者は注目した。一つは、車載用の新規ディスプレイの提案である。顧客の視点に立った製品仕様(立体画像、穴あけ、高画質、画面配列など)になっていると感じた。もう一つは、反射型カラー液晶である。1年前に展示されたサンプルの画質レベルから格段に反射カラーの画質が向上していることにびっくりした。すぐにビジネスに展開できるレベルになっていると感じた。「来年末には!」という説明員の話であったが、競合他社に先駆けてもっと早く市場導入を図り、新規需要を発掘することを期待する。