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【麻倉怜士IFA報告】Dyson、「モータ保護フィルタ」を追放したキャニスター型掃除機を発表

2013/09/16 16:22
麻倉 怜士=評論家、日本画質学会副会長
発表会で展示された新製品「DC62」
発表会で展示された新製品「DC62」
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これがコーン
これがコーン
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 英Dyson社は、従来のキャニスター型(床移動型)のサイクロン方式掃除機にあったモータ保護フィルタ(同社は「プレモータ・フィルタ」と呼ぶ)を廃止した新製品「DC52」を、「IFA2013」(ドイツ・ベルリン、2013年9月6~11日)で発表した。なお、日本での発売予定はない。

 従来の保護フィルタは、サイクロンで分離した目に見えない細かいゴミが空気とともにモーターに流れるのを防ぐという役割を持っていた。この保護フィルタを追放するのは、Dyson社の長年の夢だったという。「初めて紙パックを使わない掃除機を開発したときから、フィルタを必要としない製品を作りたいと思っていました。Dysonのエンジニアは6年かけて最新のサイクロン技術を開発しました」(ニュースリリースでの、創業者のJames Dyson氏のコメント)。

 Dyson社の技術では、サイクロン技術によりミクロレベルのサイズの粒子を遠心力で分離するのだが、電源投入からモータが遠心力最大に達するのに少し時間がかかる。この間は遠心力が弱いため、微細なゴミがモータ部分に流れてしまう恐れがある。それを防ぐために、モータを保護するフィルタが必要だった。ユーザーは1年に1度の手入れ(水洗い)しなければならない。

 プレモータ・フィルタを外すことのメリットは、手入れを追放できることだ。いかに追放するか。Dyson社は6年かけて、「Cinetic(キネティック)サイクロン・テクノロジー」を考案した。DC52は、29名のDyson社のエンジニアと750万ポンドの研究開発費をかけて開発されたという。その成果がサイクロンの先端のコーンである。柔軟な素材をコーンの先端に取り付け、振り子のように揺らす方法を思いついた。コーン内で回転する空気は、柔らかいコーンの先端を振り子のように揺らす。ホコリはコーンの先端に付着せず、常にゴミがない状態を保つのである。

 しかし、開発は意外に大変だった。エンジニアは、異なる素材を使い、50回も繰り返しテストを行った。素材が固すぎる場合、先端部分が十分に振動せず、ゴミを集じんビンに振り落すことができない。素材が柔らかすぎる場合、空気の流れが原因となってサイクロン内の空気の経路がブロックされてしまう。

 その問題を解決し、Cinetic(キネティック)サイクロン・テクノロジーが完成した。ゴミは集じんビンにたまり、サイクロン内に残らない。ここできれいになった空気がモータに入るので、モータ保護フィルタの必要がなくなり、手入れの必要もなくなったのである。目標を決めて技術開発に特化するDyson社らしい、新技術開発であった。