HDD内蔵プレイヤー「HAP-Z1ES」
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ソニーの平井一夫社長
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 「ソニーは感動を提案したい。クラウドの時代だからこそ、ソニーの提案としてハイレゾを推進したい」と、同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)の平井一夫氏は言った。

 ソニーが音のハイレゾ化に本腰を入れ始めた。単体のHDDプレイヤー、ミニコン、「ウォークマン」、ヘッドホン、ポータブル・レコーダーなど、オーディオ分野の製品をすべてをハイレゾ化する計画だ。中核となるのが、ハイレゾ音源を再生するHDD内蔵プレイヤー「HAP-Z1ES」。ジャンル名は「HDDオーディオプレイヤー」である。

 すでにパソコン+USB・DAC、NAS・HDD+ネットワーク・プレーヤーという形で、オーディオシーンでは、ファイル再生に対する対応が図られているが、ソニーの提案は、「パソコンとタブレット端末の親和性を高めたネットワーク・プレーヤー」という点が今様だ。パソコンは、音源のダウンロードと音源ファイルの一時保管場所という役割である。USB・DACでアナログ音を再生し、パソコンが司令塔になる「PCオーディオ」とは違うコンセプトだ。

 ファイルがパソコンに記録されたら自動的に本機HDDに転送コピーするパソコンからの自動転送アプリ「HAP MUSIC TRANSFER」を、ソニーは採用した。タブレット端末から「HDD AUDIO REMOTE」アプリによって曲選択や絞り込み検索、プレイリスト作成ができるが、この操作性には相当こだわったという。

 信号処理の特徴は、アナログもデジタルもすべてDSD128(サンプリング周波数が5.6MHz)に変換し、最終的にアナログ信号で出力する構成にある。「アナログFIRフィルタの性能が素晴らしいので、それを活かすためにデジタル処理としてDSDに統一しました」(担当者)。「DSD Re-Mastering Engine」と名付けている。

 筆者が、「アーティストにはDSDが嫌いで、リニアPCMのくっきり、しゃっきりが好きな人もいるのに、これは再考すべきではないか」と担当者に言ったところ、「バージョンアップによって、リニアPCMでの処理も可能にしようと考えています」とのこと。低位相ノイズ水晶発信器、振動対策、ダンパーを付けたHDDと空冷ファン、ソニー独自開発の音質用抵抗など、音質にもこだわっている。これまでオーディオのハイレゾに冷淡だったソニーの突然の変身が注目される。

 ハイレゾについては、エレクトロニクスの見本市「IFA2013」(ドイツ・ベルリン、2013年9月6~11日)の会場でのインタビューでソニー 社長 兼 最高経営責任者(CEO)の平井一夫氏は、「今はデバイスの機能がクラウドへ移るという流れになっています。しかし、絶対にクラウドに移らないのが、人間の五感です。音がいい、絵が良い、手触り、質感、デザインなどはクラウドには持っていけません。考えてみると、それってソニーのDNAなんでしょう。五感が大事になる部分を、ソニーがやらないでどうするのかと思いました。ソニーは感動を提案したい。クラウドの時代だからこそ ソニーの提案としてハイレゾを推進したい」と述べた。オーディオがハイレゾへ急速にシフトしている中で、この発言。筆者は強く支持したい。