V-NANDを搭載したSSDを披露するE.S. Jung氏(右)とJim Elliott氏(左)
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V-NANDベースのSSDを搭載したノート・パソコンを披露
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チップ写真とメモリ・セルの構造を公開
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プレーナNANDに比べて性能で有利、と主張
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書き換え回数はMLCで10万回
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2017年に1Tビットを実現へ
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480Gバイト/960GバイトのSSDをサンプル出荷
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SSDの性能が向上
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「今日をもって3次元メモリ時代が幕開け」と宣言
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 韓国Samsung Electronics社は、2013年8月13~15日に米国カリフォルニア州Santa Claraで開かれたフラッシュ・メモリ技術に関する国際会議/展示会「Flash Memory Summit(FMS) 2013」において、同年8月6日に量産開始を発表した3次元NANDフラッシュ・メモリ「Vertical NAND(V-NAND)」に関する基調講演を行った(関連記事)。V-NANDの実現技術や基本特性を説明したほか、同メモリを搭載したエンタープライズ(企業向け)SSDのサンプル出荷を開始したことを明らかにした。講演タイトルは「Ushering in the 3D Memory Era with V-NAND」である。

 登壇したSamsung社 Executive Vice President, General Manager, Semiconductor R&D CenterのE.S. Jung氏は、現在1Xnm世代まで微細化が進んでいる平面(プレーナ)構造の浮遊ゲート型NANDフラッシュ・メモリ(以下、プレーナNAND)が、大きく二つの理由から微細化限界を迎えていると述べた。一つは隣接するメモリ・セル間の干渉の増大という物理的限界、もう一つはパターニング(リソグラフィ)コストの増大という経済的な限界である。

 これらを解決する手段となるのが、メモリ・セルを3次元方向に積層して集積度(ビット密度)を高める3次元NANDフラッシュ・メモリだとする。V-NANDでは、プレーナ構造における浮遊ゲート(多結晶Si)に代えて、SiN膜に電子を貯めるチャージ・トラップ膜を採用する。設計ルール(最小加工寸法)が30~40nmのメモリ・セルを24段積層することで、20nm世代のプレーナNANDに比べて2倍の集積度を実現したという。設計ルールを従来の20nm前後から30~40nmへ緩めることによって、セル間干渉とリソグラフィ・コストの問題を同時に解決できるとしている。

 V-NANDを実現する上で最も難度が高かったのは、多段のメモリ・セルを一括形成するために欠かせない、多層膜の上から下までを貫く穴(貫通穴)を形成する工程だという。貫通穴の数は25億(5万×5万)個で、アスペクト比は約40である。

 V-NANDの動作性能は、プレーナNANDに比べて優れるとJung氏は主張した。Samsung社が量産を開始した2ビット/セル(MLC)の128GビットのV-NANDでは、20nm世代のプレーナNANDに比べて、書き込み速度は2倍、書き換え可能回数は10倍の10万回、消費電力は1/2にそれぞれ改善されるという。書き込み速度が高まるのは、ワード線間のセル間干渉が小さいことから、ワード線当たり1回の書き込み動作(one time programming)で書き込めることによるとする。書き換え可能回数が高まるのは、メモリ・セル当たりに保持できる電子数がプレーナNANDの約3倍の1000個程度に増えるためだという。消費電力を低減できたのは、回路設計の最適化などにより、動作時電流をプレーナNAND比で約半分の14mAに抑えたからだとしている。チャージ・トラップ型セルは一般に消去速度が遅くなりやすいが、この点については「用途ごとの回路設計に依存する」(Jung氏)として明言を避けた。

 V-NANDの量産は「順調に立ち上がっており、歩留まりも良好(reasonable)だ。コストも安い」(Jung氏)と主張する。今後、メモリ・セルの積層数を増やすことによって、1チップで「Tビット級のメモリ容量を実現できる」(同氏)。同社の講演スライドには、1Tビットの実現時期が2017年にプロットされていた。将来的には3ビット/セル(TLC)の実現も可能とする。