プロセサとDRAMのTSV接続を検証
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モバイル機器向けディスプレイ技術のトレンド
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モバイル機器のフォームファクターのトレンド
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モバイル機器のコンピューティング能力と電池容量のトレンド
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従来技術と比較した場合のbig.LITTLE技術の効用
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 韓国Samsung Electronics社 Executive Vice President, Sales & Marketing Team, System LSI BusinessのS.W. Jeong氏は、「2013 Symposium on VLSI Circuits」(2013年6月12~14日、京都市)の基調講演に登壇し、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器の急速な普及が、半導体技術の進化にもたらすインパクトについて語った。講演タイトルは「Perspectives on Mobile Devices and Their Impact on Semiconductor Technologies」である(講演番号C7-1)。

 Jeong氏はまず、モバイル機器の登場がエレクトロニクス業界の風景を一変させたと指摘した。それを象徴する出来事として、2010年第4四半期にスマートフォンの出荷台数がパソコンを越えたこと、2012年にモバイル機器向け半導体の出荷金額がパソコン向けマイクロプロセサを超えたこと、2014~2015年にはタブレット端末の出荷台数がパソコンを越える見通しであること、の3点を挙げた。

 こうしたモバイル機器の急成長に伴って、半導体技術の進化のベクトルは「小型化」と「低消費電力化」に向くようになったとする。前者については、スマートフォンでは筐体の大きさが飽和しつつあり、電子部品の小型化への要求が強まっているとした。後者については、モバイル機器に搭載される電池の容量は年率20%ほどで高まっているが十分ではなく、電子部品の低電力化のニーズが高まっているとする。

 続けて、モバイル機器に搭載される電子部品やディスプレイの進化のトレンドに触れた。まず、カメラ・モジュール向けイメージ・センサの解像度に言及し、(コンパクト)デジタル・カメラとスマートフォンの差がなくなりつつあると指摘した。スマートフォンに搭載されるイメージ・センサの解像度は2013年に1300万画素、2014年には1600万画素級に高まり、デジタル・カメラ(2000万画素級)と比べてそん色ない水準になるという。ディスプレイでは、スマートフォンに搭載される5型品の解像度が数年以内にWQHD(2560×1440画素級)に、タブレット端末に搭載される10型品の解像度がUHD(3840×2160画素級)に達するとした。

 こうした状況で重要になるのが、モバイル機器に搭載されるGPUの処理能力だという。ここ数年、モバイル機器に搭載されるCPUの処理能力は年率2.2倍のペースで高まってきたが、これは発熱の問題から次第にスローダウンする見通し。代わってGPUの処理能力が大きく伸びてくるとした。

カギを握るのは五つの技術

 以上を踏まえ、Jeong氏がモバイル機器向けデバイス技術の5大テーマに挙げたのが(1)製造技術の微細化、(2)CPU、(3)イメージ・センサ、(4)DRAM、(5)パッケージング、である。

 このうち(1)では、従来のバルクCMOSトランジスタは20nm世代で微細化限界を迎え、それに代わる構造として16/14世代でFinFETが主流になるとの見方を示した。FinFETはハイエンドのスマートフォンやタブレット端末では2015年ごろに使われる技術になるという。

 (2)では、高性能のCPUコアと低電力のCPUコアを処理負荷に応じて切り替えて使う英ARM社の「big.LITTLE」のような、電力効率に優れたアーキテクチャが重要だとした。加えて、GPUの演算能力をコンピューティングに活用するGPGPUの重要性を指摘した。例えば28nm世代では、GPUの演算能力を活用することによって、CPU単体の場合に比べて同じ処理に対して26%の低電力化を実現できるという。

 (3)では、現行の裏面照射型CMOSイメージ・センサでは、2000万画素を超える高解像度化が難しいと指摘した。そこで、有機材料や量子井戸構造から成る新しい画素を用いた、クロストークの少ない次世代の裏面照射型CMOSイメージ・センサが必要になるという。さらに、高解像度化を追求する方向とは別に、ダイナミック・レンジを広げて臨場感ある映像を実現する技術の重要性が増すとした。