Cuワイヤ・ボンディング技術をリードしてきた米Kulicke and Soffa Industries社(K&S)と日立化成は共同で、Cuワイヤ・ボンダーのパラメータ、ボンディング接合状態、そしてデバイス信頼性の相関を詳細に洗い出し、「2013 ECTC」で発表した(講演番号34-7)。講演タイトルは「Molded Reliability Study for Different Cu Wire Bonding Configurations」。
デバイス信頼性に与える要因として、過去にモールド樹脂のハロゲン含有率の影響とCuワイヤ・タイプの違いによる影響など、多岐にわたる報告がなされてきた。その一方で、ワイヤ・ボンダー・パラメータやボンディング接合状態とデバイス信頼性との相関を調査した報告はなかった。今回、初めてそれらの相関関係を評価して発表した。
ボンディング接合状態は、ボンディング接触面に対するCu-Al金属間化合物の形成比率(IMC比率)によって数値化した。また、信頼性評価はCuワイヤ・デバイスが最も影響されるHASTで評価した。
樹脂のハロゲン含有率やpHに次いで、信頼性に影響する要因としてワイヤの種類がある。ベアCuワイヤよりもPdコートCuワイヤ(Pd coated Cu wire:PCC)の腐食耐性が高い。K&S社の評価によると、PCCのIMC比率とHAST評価結果の関係には相関がみられず、ClとpHが中間グレードの樹脂を用いればHAST不良率は許容レベルに抑制できた。一方、ベアCuワイヤのHAST結果はPCCよりも悪いが、ボンディング後のIMC比率が高いほどHASTの結果は改善されたという。
HASTで不良となったPCCサンプルのボール界面をTEM(transmission electron microscopy)で分析すると、二つの事実が分かった。一つは、腐食されていたボール界面にはPdが検出されないのに対して、良好なボール接合界面にはPdが検出された。ワイヤ・ボンディング直後にはPdがCu-Al界面に必ずしも存在しないものの、HAST試験中にPdがCu-Al界面に拡散し、Pd-Cu-Al金属間化合物が形成されたという。
腐食部はCl濃度が高い