今回の「SID 2013」では、フレキシブル有機ELディスプレイの発表が多い。一部はフルHD(1920画素×1080画素)相当など高精細化、大型化へ進み始めた。また、InGaZnO(IGZO) TFTは今回発表のすべてのパネルで採用された。

 パナソニックは、フルカラーの4型フレキシブル有機ELディスプレイを開発した(講演番号18.4L)。素子構造はトップ・エミッション型で、駆動にはアモルファスのIGZO(a-IGZO) TFTを用いた。画素数は224画素×224画素×RGB(赤色/緑色/青色)で、精細度は80ppi(pixels per inch)である。基材はPEN(ポリエチレンナフタレート)で、曲率半径10mmまで曲げられる。

 作製時はまずガラス基板の上にPENシートを張り、その上に有機EL層などを形成する。その後、メカニカルにガラスからPENを剥離する。「プロセス温度は最高150℃と低い」(パナソニックの発表者)。ただし、オーサーズ・インタビューでは試作品を見せなかった。

 パナソニックは2012年12月の学会「International Display Workshops(IWD’12)」でも他社との連名で同様の技術を発表している。今回のポイントは、ゲート電極をTi/AuからTi/Au/Tiにしたこと。Tiがゲート電極とゲート絶縁層の接着を強化する効果があったという。

フルHD超だが羽根のように軽い

東芝が開発した10.2型のフレキシブル有機ELディスプレイ
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 東芝は、10.2型フルHD超(1920画素×1200画素×RGBW、Wは白色)のフレキシブル有機ELディスプレイを、薄く透明なポリイミド基板の上に作製した(講演番号70.1L)。精細度は223ppiとフレキシブル有機ELとしては非常に高い。素子構造はボトム・エミッション型で白色発光の有機EL層にRGBWのカラー・フィルタを用いてフルカラーを実現した。

 同社は試作品をオーサーズ・インタビューで披露した。パネルは非常に薄くて軽いため、人の動きなどで生じる空気の流れだけでふわふわと動く。ただし、「持ち運べる小型の電源がまだなくて」(同社)、動態展示はなかった。