センサ部の断面図(東京大学のデータ)
センサ部の断面図(東京大学のデータ)
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 2013年1月に開催されたMEMS関連の国際学会「IEEE MEMS 2013」では、分解能が1Pa未満の絶対圧センサに関する発表があった(論文番号:090)。10cmの高さの違いを検知できるため、自動車用ナビゲーション・システムで走行中の道路が地上か高架かを認識する用途に使える可能性がある。聴診器、水中マイクなどへの応用にも期待ができるという。

 開発したセンサは、圧力を検知するための微小構造部を従来よりも小さな力で動くようにして感度を高めた。従来の一般的な圧力センサは、Si薄膜で空洞を密閉した構造となっている。測定対象の空気圧と、密閉空間との気圧差によって生じる力でSi薄膜がたわみ、その歪みによる応力を薄膜に付けたピエゾ抵抗素子で測定していた。Si薄膜は、周囲を固定された状態でたわむことになる。これに対して今回のセンサは、圧力差で動く部分をカンチレバー(片持ち梁)としている。すなわち、Si薄膜の周囲すべてを固定せずに、一片のみを固定した構造とする。これで、既存のSi薄膜よりも動きやすい状態とする。

 圧力差の検知のためには、カンチレバーによって密閉空間をつくる必要があるので、カンチレバーを液体で覆った。カンチレバーの支持されていない側の隙間を狭くすることで、液体が表面張力で密閉空間に漏れこまないようにしている。こうした構造によって、液体をかぶせたカンチレバーが気圧を受けると、密閉空間との気圧差で生じる力でカンチレバーが従来構造よりも大きくたわむ。これをピエゾ抵抗素子で検知している。液体でセンサ部を覆うという構造上の特徴から、液体中で水圧や音圧を測定する用途にも適している。