6個の撮像素子を備えるPanaCastのカメラ
6個の撮像素子を備えるPanaCastのカメラ
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右が共同創業者でPresident兼CEOのAurangzeb Khan氏、左が共同創業者でCMOのLars Herlitz氏
右が共同創業者でPresident兼CEOのAurangzeb Khan氏、左が共同創業者でCMOのLars Herlitz氏
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カメラの内部
カメラの内部
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 米ベンチャー企業のAltia Systems社は、6個の撮像素子で撮影した周囲200度のパノラマ映像を、クラウド上のサービスから視聴できるようにするシステム「PanaCast」を開発、2013年4月から発売する。

 オフィスの隅などにこのカメラ・システムを設置すれば、遠隔地のスマートフォンやタブレット端末からオフィス内のさまざまな位置の映像を見たり、ホワイトボードやディスプレイ画面などを拡大して見たりできる。パノラマ合成した画像をクラウド上にリアルタイムにアップしているため、多数のユーザーが同時にアクセスし、かつ各ユーザーがそれぞれ見たい角度の映像を任意に選択して視聴できる点が強みという。

 高能率の圧縮技術を使うことで、300kビット/秒程度の通信帯域を確保できる地域であれば、映像を視聴できる。「3Gの通信回線があれば、専用回線が無くともテレビ会議などに活用できる。通常のテレビ会議システムでは100万円以上の価格をすることも多いが、今回の製品は初期費用がおよそ7万円で月々の利用料も20米ドル程度で済むようなモデルを想定している」(Altia Systems社)。企業向けのテレビ会議用途や、大学などの教育用途、家庭やオフィスのセキュリティ用途などに向ける。

 今回のシステムは、6個のCMOSイメージ・センサと、センサが取得したデータをパノラマ画像として合成するプロセサ、そして高能率に圧縮する符号化LSIなどで構成する。このうちの符号化LSIは、米Cavium社の製品を活用しており、圧縮符号化の際の遅延時間が極めて短いことを特徴とする。「画像の1フレームを待たずに圧縮して送信していくため、遅延を1m秒程度に減らせる」(Altia Systems社)という。CMOSイメージ・センサで取得した信号から雑音を効果的に除去するアルゴリズムを保有しており、S/Nを高くできることで、パノラマ映像の作成や高能率のリアルタイムの符号化が実現できていると主張している。

 同社は今回のシステムのハードウエアの販売だけでなく、クラウド経由のテレビ会議サービスを提供する事業にも乗り出したい考えだ。このため、様々なサービス事業者との提携交渉を進めている。クラウド・ファンディングを手掛ける「kickstarter」で、一部の開発プロジェクトの支援を募ったところ、6週間で1万9000人以上がアクセスし、1万5000米ドルの目標金額の3倍となる5万米ドルを集めることに成功したという。2013年4月には、発売イベントを米ニューヨークおよびサンフランシスコで開催する予定。また現在、日本市場への参入を予定しており、日本の販売提携先を探索しているという。