支持部が1点のワイングラス構造の振動子(論文番号:8-2、写真:米Georgia Institute of Technology)
支持部が1点のワイングラス構造の振動子(論文番号:8-2、写真:米Georgia Institute of Technology)
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 今回の「MEMS 2013」では,3次元的なワイングラス振動子の発表が3件ありました(論文番号:8-2,8-4,105-Mo)。米国の友人に聞くと,DARPAでHemispherical Resonator Gyro(HRG)を超小形化するプログラムが行われており(MRIG program),10もの大学・研究機関が採択されているそうで,今回の3件の発表は,その一部に過ぎないとのことでした。3次元的なワイングラス,つまり本物のワイングラスと同じような形は,取手のところで1点支持するので,振動損失が少なく,つまりQ値が高く,また,その振動モードは外部からの加速度やショックにあまり影響を受けません。

 ワイングラスの形状を作るために,Si基板に半球状の穴をエッチングして,そこに成膜してリリースしたり,ガラス吹きの要領で石英を小さく丸く膨らませたりといった手法が採られています。

 ワイングラスの形が完全に対称であれば,ワイングラス振動のモードは縮退して周波数応答に一つのピークしか出ませんが,対称性が崩れれば,ピークがスプリットします。これはHRGとしては望ましくありません。Si基板に半球状の穴を加工する方法では,いかに真球に近い形にエッチングするかがポイントですが,名古屋大学を御退職後,愛知工業大学に異動された佐藤先生が,日立製作所時代に超音波顕微鏡のSi音響レンズ(半球状の穴)を加工するために開発されたウェットエッチング技術(精密工学会誌59, 1(1993))を思い出しました。