図1(図:米University of California, Berkeley)
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図2(図:米University of California, Berkeley)
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 一口にジャイロと言っても,ランダムウォークにして0.01deg/√s程度のローエンド品から0.0001~0.001deg/√h程度のハイエンド品まであります。ローエンド品はナビゲーションや手振れ防止を目的としたもので,MEMS振動ジャイロはこれに相当します。一方,究極のハイエンド品はESG(electrically-suspended gyroscope)であり,米Rockwell International社などによって1970年代に原子力潜水艦のナビゲーション用に開発されました。原子力潜水艦は数カ月も潜ったまま航行できなくてはなりませんから,超高精度のジャイロを必要とします。ESGは直径1cmのBeの球体を静電力で空中に浮かし,15万rpmで回転させています。Beの球体は真球に近い程よいのですが,高速回転させると遠心力で楕円状に歪みますから,回転させたときに真球になるように少し楕円状に加工しておきます。さらに,それが本当に真球ですと回転させられませんから,内部にTa線を埋め込んで,重心を0.38μmだけオフセットさせてあります。

 一般的なMEMSジャイロはローエンド側で使われていますが,光ファイバジャイロなどに一部とって替わることを目指して高性能化する開発が行われています。成功例は東京計器の静電浮上リングロータジャイロ(関連情報)であり,0.1deg/√hオーダの性能を実現できます。これは,直径1.5mmのSiリングを静電力で浮上させ,数万rpm以上で回転させることによって,3方向の加速度と2方向の角速度を同時に計測するものです。現在,鉄道の乗り心地を改善するための列車動揺測定装置として実用化されています。