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IEEE MEMS 2013

【MEMS 2013】着実に進化している圧電材料

  • 田中 秀治=東北大学
  • 2013/01/23 03:18
  • 1/1ページ
産業技術総合研究所による圧電材料の特性改善(データ:産業技術総合研究所)
産業技術総合研究所による圧電材料の特性改善(データ:産業技術総合研究所)
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FBARに新しい圧電材料(データ:村田製作所)
FBARに新しい圧電材料(データ:村田製作所)
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 MEMSは微小「電気機械」システムですから,電気-機械変換(electro-mechanical transduction)はMEMSにとって最も重要な機能の一つです。したがって,電気-機械変換を行う圧電材料は,MEMSにとって非常に重要な機能材料です。PZTは鉛を含みつつも性能や扱い易さから,依然,圧電材料として主役の座にあり,また,パナソニックやソニーの振動ジャイロ,エプソンや富士フイルムのインクジェット・プリンタ・ヘッドなど,PZT薄膜を用いたMEMSは日本が強みとするものです。

 PZTの性能指数に圧電d定数があり,これはPZTをアクチュエータとして用いたときの(非拘束時の)最大変位を決めるものです。一方,PZTを逆方向,つまりセンサとして用いた場合,センサを拘束していないときの電圧出力はg=d/ε(圧電出力定数)で決まります(ここに,dは圧電d定数,εは比誘電率)。dを大きくするには,よく知られているように,PZTをMPB(morphotoropic phase boundary)組成(ZrとTiの比で52:48程度)で成膜します。PZTはZrリッチで菱面体晶,Tiリッチで正方晶となるのですが,MPBはその境界を意味します。MPB組成のPZTではdが大きいのですが,εも大きく,gが最大になるとは限りません。gを最大にするには,εを小さくするために,PZTをTiリッチで正方晶にした方がむしろよいことが知られています。

 しかし,単にTiリッチで成膜すればよいかというと,それ程,単純ではありません。TiリッチのときPZTは正方晶(格子長がa=b<cの直方体)となりますが,dを大きくするためには,c軸(分極方向)が膜厚方向に向いていないといけません。しかし,Si基板上にTiリッチのPZTを成膜すると,どうしてもc軸が面内に寝てしまいます。これは,PZT,Siの熱膨張率がそれぞれ8ppm/K,3ppm/K程度であるために,PZTを成膜温度(600℃)程度から降温し,キュリー点(350℃)を跨ぐとき,熱膨張差による歪を緩和するために,a軸・b軸より長いc軸が横向きになってしまうからです。

 産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター(前田龍太郎センター長)の小林健さんと東京工業大学の舟窪浩先生は,Si基板上にTiリッチのPZTを成膜し,横に寝てしまったc軸を後から電気的に起こす“wake up”技術を発表しました(論文番号:038-Tu)。ZrとTiの比が30:70のPZTを厚さ1.7μmに成膜し,これに80Vの電圧をかけると,ほとんどa軸配向だったものが,半分弱までc軸配向になります。dはMPB組成のそれの半分程度ですが,εが400程度と1/3程度に小さく,結果的にセンサとして用いたとき,大きな電圧出力が得られているそうです。また,アクチュエータとして用いたとき,この組成では印加電圧に対してよりリニアに動きますから,MPB組成のものと比べて倍程度の印加電圧が必要ですが,実質的に使える可動範囲はそれほど見劣りしません。小林さんらは8インチSiウエハーを用いてPZT薄膜関係の技術を開発しており,日本のMEMS産業に貢献する準備は整っていると言えます。

 さて,上でdが大きいとεも大きいと述べましたが,様々な圧電材料についてdとεとの関係をグラフにすると,見事に直線上に乗ります。したがって,εが小さいのにdが大きいものが圧電材料としては「偉い」ということになります。そのような材料として,最近,注目されているものに,デンソーと産業技術総合研究所との共同研究で見出されたScAlNがあります(特開2009-10926)。AlNにScを40%程度入れると,そのd33はAlNのそれの5倍弱(およそ25pC/N)にもなりますが,比誘電率は2倍程度(およそ20)にしかなりません。この圧電材料は,論文(Morito Akiyama et al., Adv. Mater., 21 (2009) pp. 593-596など)で報告されてから注目を集めており,FBAR(film bulk acoustic resonator)の試作例も報告されていますが(Milena Moreira et al., Vacuum 86 (2011) pp. 23-26),「IEEE MEMS」で登場したのは,今回が初めてではないでしょうか(論文番号:120-Th)。この論文で,村田製作所はScAlNを用いたFBARの評価結果などを報告しています。今後,ScAlNのMEMSへの応用が進むかもしれません。

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