そもそも、なぜUXに着目し、専門の部署を作られたのでしょうか。

石井 もともとは、私が担当しているタブレット端末の事業部でUXベースのプロセスを加速しようと思っていました。タブレット端末は特に、ほかの機器と接続して価値が倍増するものです。スペックベースではなく、顧客体験(UX)ベースでお客様にいい商品を届けられるよう、UXを起点とした組織やプロセスにする必要があると考えました。

 この構想を鈴木国正執行役らと色々と議論したところ、全カテゴリの商品企画・戦略のヘッドを集めてUX・商品戦略本部を立ち上げようということになりました。例えば、現在UX・商品戦略本部で特に力を入れている機器間連携をより効率的に図るには、各事業部間のコミュニケーションが大変です。機器の数の組み合わせだけやりとりが生じるので、新しいUX・商品戦略本部では、横串のUX戦略を決め、さらに実行に向けて製品ごとの事業部間をとりまとめています。

ソニーの目指すUXとはどのようなものになりますか。

石井 キーワードは特に決めてはいません。我々現場レベルでいつも話しているのは「1+1は3や4にもなり得る」というものになります。今までになかった顧客体験を創造するにはブリッジになるアプリやプロトコルが重要です。

具体的なサービスを挙げるとすれば、何があるでしょうか。

石井 具体例として、今回CESで発表したTV SideViewというアプリがあります。米国などでは、「セカンドスクリーン」のエコシステムが立ち上がりつつあります。セカンドスクリーンのエコシステムとは、クラウドとモバイルデバイス、テレビの組み合わせで新しい体験を作り出そうというものであり、一つの方向性として期待しています。

CESの併催イベントでも、「セカンドスクリーンサミット」が開催されてました。

石井 セカンドスクリーンは、この半年くらいで火が付きました。今年は、このテーマが来ています。

写真3 テレビ番組の盛り上がり度を一覧するサービス「Thuuz」
写真3 テレビ番組の盛り上がり度を一覧するサービス「Thuuz」
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 展示会場でも「Thuuz」と呼ばれるアプリは、タブレットやスマートフォンでテレビ番組の「盛り上がり度」を表示し、誘導するデモを行っています(写真3)。これも、ソーシャルメディアとの連携をうまく使ったアプリということになります。

柿田 Thuuzでは、「接戦かどうか」「キープレイヤーが活躍しているか」など外部の専門企業が提供するリアルタイムのデータを活用して、スポーツ番組へ誘導しています。

石井 ソニーには、グループ内のGracenote社によるビデオやテレビ関連情報に関する資産があるので、さらに活用を進めてソニーならではの、TV、モバイルデバイス、クラウドを組み合わせた新しい顧客体験創造を加速していきたいです。