米WiTricity社は、同社の磁界共鳴技術を用いたワイヤレス給電機器を多数試作、「2013 International CES」の招待客向けブースで披露した。同社は、米MITのワイヤレス給電技術の成果を基に創業したベンチャー企業。これまでは、トヨタ自動車との提携など、自動車向けの取り組みが目立っていた。今回のCESでは、テレビやスマートフォンに関する試作システムを多数出展しており、携帯機器や家電機器メーカーとの協業を強く意識した展示を行った。
まずスマートフォンに向けては、小型のフィルム状の共振器を開発し、スマートフォンの電池パックのフタや筐体に内蔵する例を示した。スマートフォン向けでは共振器を小さくする狙いから、給電に用いる周波数を6.78MHzにしている。共振器がフィルム状のため、曲面のある筐体にも組み込みやすくなっており、小型のBluetoothヘッドセットに共振器を組み込んだ試作機を見せた。さらに今回、業界団体「WPC(wireless power consortium)」が推進する規格「Qi」と、イスラエルPowermat社の充電技術を利用する端末、そしてWiTricity社の技術を実装した端末の、計3種類のスマートフォンを同時に充電できる台を新規に開発した。三つの異なる規格に基づく充電を、1台の充電台で実現するのは、今回が初めてとする。「将来、多数のワイヤレス給電規格が併存する可能性が高い。そうしたときでも、1台の充電台で済むようにしたい」(WiTricity社の担当者)という。
一方でテレビに関しては、韓国Samsung Electronics社のテレビを、WiTricity社のシステムで給電して駆動した。こちらは250kHzと、より低い周波数帯を活用している。今回の試作機では、送電側と受電側の距離は50cm程度だが、伝送距離は共振器の大きさを変えることでさらに伸ばせるという。このほか、単3形の電池にフィルム状の共振器を埋め込んで、充電するというコンセプトを示した。デジタル・カメラやリモコンなど、各種の携帯機器を、放り込むだけで充電できる“充電箱”も見せた。こちらも250kHzの周波数を活用している。
さらにWiTricity社はCESの開催にあわせ、アルプス電気との提携を発表した。車載機器への採用に向けた開発を共同で進めることを検討中という。