【パリショー】ホンダの新ハイブリッド車、「デザインは空力性能を突き詰めた結果」――デザイナーの箕輪氏が語る
ホンダ 箕輪元明氏
ホンダは、パリモーターショー2008(Paris Mondial de l'Automobile 2008、一般公開日:2008年10月4〜19日)で、2009年春に日米欧で発売されるハイブリッド車「インサイト」のコンセプトモデルを公開した。燃料電池車「FCXクラリティ」との共通性や5ドアハッチバック車となった経緯、今後のハイブリッド車戦略などを、本田技術研究所四輪開発センターデザイン開発室でクリエイティブ・チーフデザイナーを務める箕輪元明氏に聞いた。箕輪氏はFCXクラリティを含めたホンダ新世代車全体のデザイン統括責任者でもある。
Q:ホンダは年央社長会見で福井社長が「次世代のハイブリッド車は、FCXクラリティを小さくしたイメージなる」としていた。インサイトは前から見たところ、特にAピラーからフロントフェンダーへのつながり方はFCXクラリティに近く見えるが、これはホンダの新世代車のデザイン統一性を考慮しているのか。
A:開発初期段階から、小さな5人乗りハッチバックというパッケージが決定していた。空力を考慮した結果、むしろリア周りを含めてFCXクラリティに近くなったと解釈してほしい。
ホンダが目指している先進的でスポーティーなイメージを実現するため、ヘッドランプとグリルで先進感、さらにヘッドランプからバンパー下をつなげてダイナミックさを表現している。今回のコンセプトモデルの形状は、ほぼこのまま量産車になる。
リア・コンビネーション・ランプについては、使用電力が低く燃費向上に役立つためLED(発光ダイオード)を使う可能性が高い。タイヤ外径は今回と同じだが、ホイールは小さくなる可能性が高い。ホイールのザインは今回お見せしたコンセプトモデルとは形状は違うが、かなりこだわっている。空力的な形状と外観デザインとの調和を考慮している。具体的な形については『乞うご期待』としかここでは言えない」。
Q:ボディ形状におけるトヨタ自動車「プリウス」との類似性を指摘する声がある。
A:空力を突き詰めたフォルムでこうした形状となり、プリウスは全く意識していない。基本的形状や、リアウインドーとリア・エクストラ・ウインドーの両立は、2代目CR-Xで開発し、初代インサイト、FCXクラリティで培ってきたホンダのノウハウだと思う。
(あえてプリウスと比較するなら)室内スペースはプリウスと同等だが、全高がプリウスより70mm低く床も低い。こうすることで、ドライバーの着座位置も下がる。また、低重心化によって運動特性が改善するほか、空力性能にとっても有利だ。ただ、前方の視界をよくするため、フロントウインドーの最下端をどれだけ低くできるかがポイントだった。エンジンルームのレイアウトを1mm単位で詰めて、それを達成した。
Q:ワールドカーとしてサイズはどのように決めたのか。
A:空間をどこまで高効率化するのか。つまり、無駄な寸法をなくすのかがポイントになった。これは初代のような2シーターではなく、あくまでも5人乗車と十分な荷室スペースを考慮した寸法だ。その結果、日米欧すべてのユーザーが満足する形状にできたと思う。
Q:モータや2次電池の小型化など、電気・電子技術の進化の速度は早いが、デザインとのすり合わせはどのようにしたのか。
A:電気システムを小型化することで、2次電池とパワー・コントロール・ユニットを荷室の下に配置でき、ボディ全体のデザインの自由度が上がった。新型インサイトでは、新しい技術に基づく新しいデザインを志向している。具体的には、エンジンが小型化されたことを象徴するため、フロントのショートオーバーハングを特徴とした造形が大きなデザインテーマだった。また、ホンダ社内では、エモーショナルテクノロジーと表現するが、最も重要なことはユーザーの目にどれだけ魅力な商品に写るかだ。
デザインはスタイリングだけでなく、開発の初期段階のパッケージからチーム体制を敷いて、設計・テスト部門とマーケティングのリーダーが議論を重ねてきた。開発過程で最初から最後まで、方向性はぶれなかった。ホンダの開発基本である、「MM(マンマキシマム・メカニズムミニマム、機構は小さくして人の空間は広く)」の精神を貫いた。
Q:プラグインハイブリッド車の構想はないのか。
A:開発の初期段階からなかった。
Q:軽量化という観点では、ボディやサスペンションに新素材を使用するのか。
A:特殊な素材を多用することはない。最も重要なのはお求めやすい車両価格の設定だ。費用対効果を考えて材料を選んでいる。軽量化についてはハイブリッドシステムが主体となる。システムの基本は、「シビックハイブリッド」を踏襲しながらモータを薄型化し、2次電池を小型化した。
Q:内装のコンセプトについてはどうか。
A:環境性能とスポーティー性の両立を目指した。室内全体はピラーが奥に位置する形状で広々とした印象を持つようにした。走る楽しさは、運転席周りを黒基調とし、運転者が囲われるような形状で表現した。また、小型車でも、ユーザーにはプライドを持って乗ってほしいので、手が触れたりする部分や見える部分には徹底した品質管理を施した。
Q:荷室下にパワー・コントロール・ユニットと2次電池を搭載することは、開発当初から決まっていたのか。
A.:その通りで、使い勝手を第一に考えた結果だ。荷室スペースを確保することが重要だった。シビックハイブリッドでは後席の背もたれ後部に2次電池があるので、後席が倒せない、トランクスルーができないという制約があったので、それを改善している。
Q:今後のハイブリッド車の車種展開について、福井社長は2009年春のインサイト発売以降4年間で新型モデルを3車種出すと明言している。2010年に「CR-Zコンセプト」をベースとする2ドアクーペ、「フィット」のハイブリッド版などが該当すると思うが、セダンなどへの展開もあるのか。
A:将来への展開として、セダンの可能性も否定しない。だが、まずはなるべく多くのユーザーにホンダのハイブリッド車に乗ってほしい。そのために、ベーシックなワールドカーとして5ドアハッチバックから投入する。
Q:初代インサイトは3ドアだったが、2代目が5ドアとなることで名称を変更する可能性はあったのか。
A:社内で議論はあった。だが、初代インサイトが目指した高い技術的なハードルを2代目が置かれた市場状況でも目指したいという思いが強かった。そのため、“洞察力”という意味のインサイトが2代目でも最適だと考えてこの名称を引き継いだ。
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