図1 トヨタ自動車の「Fine-X」
図1 トヨタ自動車の「Fine-X」
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図2 ホンダの「FCX CONCEPT」
図2 ホンダの「FCX CONCEPT」
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図3 DaimlerChrysler社の「F600 HYGENIUS」
図3 DaimlerChrysler社の「F600 HYGENIUS」
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 2005年10月22日~11月6日に開催されている「第39回東京モーターショー」にはトヨタ自動車やホンダ,DaimlerChrysler社などの複数のメーカーが燃料電池車のコンセプト・カーを出品した。各社ともに燃料電池のスタックや燃料タンクを床下に配置する燃料電池専用車体を開発し,2012~2015年を目標に燃料電池車の一般販売を目指すという。実際,今回展示のあったホンダの「FCX CONCEPT」やトヨタ自動車の「Fine-X」,DaimlerChrysler社の「F600HYGENIUS」などのコンセプト・カーは燃料タンクと燃料電池スタックを床下に収納している(図1,2,3)。

 燃料電池で課題となっているのは,燃料タンクへの水素貯蔵量の向上と低コスト化である。トヨタ自動車とホンダは,将来的には現在の燃料タンクの大きさを維持しながら5kgの水素を貯蔵したいとしている。そうすれば「2015年までに燃料電池車のtank-to-wheelの効率を現在の52%程度から60%に引き上げることで,走行距離を現在の350kmから2倍の700kmに延ばせる」(トヨタ自動車の説明員)という。

 燃料タンクには両社とも高圧タンクと水素貯蔵材料を組み合わせた燃料タンクを想定している。トヨタ自動車では現在,70MPaの高圧タンクに水素吸蔵合金を組み合わせることで7.3kgの水素を貯蔵できるタンクを発表しているが,水素吸蔵合金が重いため燃料タンクが400kgと非常に重くなってしまう。そのため,同社では水素吸蔵合金の吸蔵効率を現在の2倍に引き上げ,「燃料タンクの重さを半減したい」考えだ。なお,DaimlerChrysler社のF600HYGENIUSの燃料タンクには70MPaの高圧タンク2本を使用し,4kgの水素を貯蔵している。

 低コスト化については,燃料電池スタックの電解質膜やセパレータ,触媒のPt(白金)をはじめ,燃料タンクのCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの価格が高く,材料単価を引き下げるために材料置換や製造方法の見直しを進めていく計画だ。トヨタ自動車では既に,Ptを従来の約1/10に削減できる燃料電池のセルを開発しており,今後自動車用の燃料電池のスタックとしてモジュール化した場合に性能が確保できるかを検証していくとしている。