図1 スタンレー電気とドイツHella社が共同開発したヘッドランプ
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図2 小糸製作所が出展したヘッドランプ
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図3 ドイツOSRAM社がデモンストレーションしたヘッドランプ用の白色LED光源
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図4 豊田合成が出展した白色LEDヘッドランプ
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図5 トヨタ自動車がレクサス・ブランドのコンセプト・カーとして出展した「LF-Sh」。白色LEDヘッドランプを搭載
図5 トヨタ自動車がレクサス・ブランドのコンセプト・カーとして出展した「LF-Sh」。白色LEDヘッドランプを搭載
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 高出力の白色発光ダイオード(LED)をロー・ビームだけでなくハイ・ビームにも使ったヘッドランプの試作品を,スタンレー電気と小糸製作所がそれぞれ東京モーターショーに出展した。白色LED搭載のヘッドランプといえば,ランプ・メーカーは最近の展示会でロー・ビームだけに白色LEDモジュールを使い,ハイ・ビームにはHIDランプを使う試作品を見せてきた。これに対して今回は,ハイ・ビームにも白色LEDモジュールを使っている。ランプ・メーカーのほか,ドイツOSRAM GmbHや豊田合成といった白色LEDメーカーからもヘッドランプ向けの白色LED光源を展示するなど,白色LEDモジュールの高出力化が着実に進んでいるのを印象付けていた。いずれの試作品も,白色LEDモジュールは光学レンズを備えた状態で直径が30mm~50mm程度と,LEDにしては大きい品種である。

2008年ごろには発光効率はHIDランプと同等以上に


 スタンレー電気が展示したヘッドランプはドイツHella KG Hueck&Co.と共同開発したもの(図1)。試作品は,大型のLEDチップ4個を1パッケージに収めた高出力白色LEDモジュールをロー・ビーム用に5個,ハイ・ビーム用に2個搭載する。ロー・ビーム点灯時の光束は合計700lmで「HIDランプが市場に登場したころの明るさは確保できている」(スタンレー電気の説明員)という。各白色LEDモジュールは140lm程度の光束を放出していることになる。同社は試作品の消費電力を公表しなかったが,現段階ではヘッドランプとして必要な明るさを確保するために今回の試作品に投入する電力は,同等の明るさをHIDランプで得る場合に比べて1.4倍~1.6倍に大きくなるという。白色LEDの発光効率は「一時期改善のペースが鈍ったときがあったが,最近は勢いを取り戻してきた。2008年ごろにはHIDランプと同等以上の発光効率を得られるだろう」(同社の説明員)とする。
 今回のヘッドランプの開発において,LEDチップを収めたパッケージまではスタンレー電気が開発した技術を使い,このパッケージを用いてヘッドランプに仕立てる際の光学系の技術をHella社と共同開発した。Hella社のアイデアを取り入れながら,パッケージ技術にも改良を加えているという。

 小糸製作所が展示したヘッドランプは,白色LEDモジュールを11個搭載し,ロー・ビーム用に6個,ハイ・ビーム時の追加用に5個を割り振る(図2)。ロー・ビーム点灯時の光束は800lm~1000lmである。走行状態に応じて,ロー・ビーム用の白色LEDモジュールの点灯を制御できるようにした。例えば,高速走行時に中央部の5個を点灯してヘッドランプから放射する光の広がりを抑えながら遠方まで光が届くようにする。市街地走行時には中央部の上部3個と中央部の横に1個配置したロー・ビーム用の白色LEDモジュールを点灯し,ヘッドランプからの光が放射する角度を広げる。このヘッドランプはAFS機能も備えており,カーブ走行時には自動車が曲がる方向に向かって光の放射方向が変わるようにヘッドランプ中央部が動く。

光源システムのエネルギー変換効率は65%


 OSRAM社が出展したヘッドランプ向けの白色LED光源は,ドイツOSRAM Opto Semiconductor GmbHが開発した「OSTAR」と呼ばれる白色LEDモジュールを搭載する(図3)。OSTARは,1mm角と大きなLEDチップ4個を1パッケージに収めたもの。モジュール1個当たりの光束は300lmと大きい。OSRAM社はOSTARを使い,白色LEDモジュールを駆動する電源ICを含めた光源システムを試作した。このシステムに電力を投入し,光エネルギーに変換される効率は65%を確保している。光源の背面には大きなヒートシンクを備えており,光源の冷却効率も高いとする。

 豊田合成が出展した白色LED光源も,複数個の大型LEDチップを1個のモジュールに収めたものである。同社はこの光源を12個使って試作したヘッドランプを仕立てた(図4)。光束などの詳細は未公表。

白色LEDヘッドランプの実用化時期に若干の遅れ


 今回の東京モーターショーでは,ほとんどのコンセプト・カーで白色LEDヘッドランプを採用している。奇抜な形状で実用化はほど遠いと思われる試作車だけではなく,例えばトヨタ自動車のレクサス・ブランドの旗艦セダンとなるコンセプト・カー「LF-Sh」やトヨタ・ブランドの次世代ミニバンのコンセプト・カーなどにも白色LEDヘッドランプが載っており,実用化時期がかなり近いと感じることができた(図5)。

 しかしながら,白色LEDをヘッドランプの主光源に使うために必須な法改正が若干遅れ気味であるという。白色LEDヘッドランプの実用化時期が先に延びているとの声が,各社のブースから数多く聞かれた。国連欧州経済委員会でヘッドランプ関連の法規制を審議する「GRE」が2006年末~2007年初頭にヘッドランプの主光源への白色LEDの利用を認めるとみられていたが,利用可能になる時期は早くても2007年秋にずれ込むようだ。GREの承認を受けて,日本を含む他地域でも白色LEDの利用を認めるようになると見られている。あるヘッドランプ・メーカーによると,2005年秋に開催されるGREの委員会で承認されれば2007年秋ごろに法規制が改正されることになるが,仮にこの委員会で承認されないと利用可能になる時期が2007年秋よりもさらに先に延びることになりかねないという。