大学発ベンチャーとなると、高い技術力に関係者の期待が集まる。特に東大発ベンチャーとなれば、それだけでもかなり話題になるベンチャー企業が多い。ただし、技術が優れていることと社会のニーズを満たすことは違い、決して技術だけで成功するわけではない。

 現にすごいすごいと言われながら、実際「それ誰が使ってんだ?」と思う話題のベンチャーもある。そんな中、独自の技術力がどんぴしゃり社会ニーズにマッチしている実力派の東大発ヘルスケアベンチャー企業を紹介したい。設立2年目のエルピクセル(LPixel)だ。

エルピクセルのメンバー
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 昨今、電子顕微鏡などの撮像装置の高度化が進み、1秒間に何千枚もの画像を撮ることができるようになった。一方で、より詳細な情報が入手できる代わりに、研究者はその画像処理に相当の時間を費やす必要が出てきてしまった。

 これが、エルピクセルが切り込む課題(社会ニーズ)だ。東京大学の研究室の技術をもとに、ライフサイエンス×画像解析の領域で、研究の効率化を促進するサービスを提供している。異常ながん細胞の検知や、偽造したデータのあぶり出しなど、大量の画像データから微細な変化を捉えるサービスである。

 ここには、画像処理などIT系技術だけじゃなく、異常値を発見するアルゴリズムを組むためのライフサイエンス系の専門知識も必要になる。現時点でこの掛け算においては、他にない圧倒的な強さを誇る技術集団である。

 この技術が進展すると、研究の効率が飛躍的に上がるだけじゃなく、画像解析技術の蓄積により、特定の研究者しかできなかったことを他の研究者ができるようになる。そして、自動画像解析だからこそ、今まで見過ごされていたものも見つけられるようになる。優秀な研究者が今までの3倍くらいやるべきことに没頭できれば、研究力の大幅アップだけでなく大幅な人件費削減にもつながる。

 既に大手製薬会社などからの引き合いも多いというエルピクセル。急加速している同社の代表取締役 島原佑基氏に話を聞いた。