ワールドテック講師の皆川一二氏
ワールドテック講師の皆川一二氏
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 「製品の不具合を対策したのに再発させてしまった」「さまざまな対策を施しているのに、不具合件数が一向に減らない」…。日本メーカーの多くの技術者が今、こうした悩みを抱えている。この悩みに応えるのが、再発防止策である「なぜなぜ分析」だ。問題の本当の原因である「真因」を追究して対策を施す。

 「技術者塾」において「不具合の根本的対策に役立つ『なぜなぜ分析』」の講座を持つ、ワールドテック講師の皆川一二氏に、「なぜなぜ分析」の効果を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──「なぜなぜ分析」を今、なぜ学ぶ必要があるのでしょうか。

皆川氏:ご承知の通り、自動車の大規模リコールをはじめ品質問題が世間をにぎわせています。これにより、今、製品の品質に対する顧客の目が一段と厳しくなっています。いったん大きな品質問題を発生させてしまうと、会社存続の危機に陥りかねません。そのため、不具合を再発させない根本的な対策をとる必要がこれまで以上に重要になっているのです。ここで役立つのが「なぜなぜ分析」です。仕組みの改善を徹底して行い、品質問題を徹底的に防止する手法だからです。

──「なぜなぜ分析」はどのようなものなのですか。

皆川氏:事例を使って「なぜなぜ分析」を習得する効果を紹介しましょう。不具合の内容は、部品の向きを逆に組み付けてしまい、車両組み付け時に重大な機能不良を発生させてしまった、というものです。直接の原因(直接原因)を調べると、逆組み付け防止用の「ポカヨケ」治具が摩耗し、ガタが大きな状態で使用したためでした。これにより、逆組み付けもOKだと判断されてしまったのです。

 この不具合の本当の原因、すなわち「真因」を追究すると、治具のポカヨケ機能の日常管理要領を決めていなかったことだと分かりました。そして、この真因を踏まえて、治具のポカヨケ機能の日常管理要領を決める、という対策を施しました。

 このように、「なぜなぜ分析」では直接原因の対策でとどめません。この直接原因を生じた「人の行動」や「仕組み」の原因の究明、すなわち「真因の究明」までを行います。そのため、今回発生した不具合の再発はもちろん、類似の不具合や事故の発生を防止することができるのです。「なぜなぜ分析」を使わないと、多くの場合、直接原因の対策でとどまってしまいます。こうなると、問題発生の核心部分に手を打てないので、再び不具合で悩まされることになりかねません。

──「なぜなぜ分析」を学ぶ際のキーポイントを教えてください。

皆川氏:人の行動と仕組みに注目することがキーポイントです。そして、その「発生原因」と「流出原因」の両面で真因を究明し、「発生防止」と「流出防止」の両面で仕組みの改善を行うことが重要となります。

 技術者塾の受講者には、「なぜなぜ分析」の実践力を身に付けてもらうために、「なぜなぜ分析」の手順、特に人の行動と仕組みのどこに問題があるのかを見いだす「事象関連図」の作成方法に力点を置いて説明します。

──想定する受講者はどのような方ですか。また、受講することでどのようなスキルを得られますか。

皆川氏:開発や設計、品質保証、製造、販売サービスなどの部門に在籍する、入社10年目程度までの技術者や、現場を指導する立場にあるリーダーおよびマネージャーに参加していただきたいと思います。  学習の理解度は講義のみでは10%、事例を含めて30%、そして演習を加えると75%まで高まると言われています。技術者塾では、講義、事例、演習の3段階で学び、「なぜなぜ分析」の現場実践力を身に付けます。これにより、不具合の再発防止を実現できます。