2014年度の修正業績予想を見てみましょう。フラッシュメモリーが主力の電子デバイスの営業利益は2140億円。全社の最終的な営業利益がそれを下回る1700億円ですから、フラッシュメモリー事業は相変わらずキャッシュを生み出す主力事業として全社に貢献し続けているようです。

 現在の東芝の中でのフラッシュメモリー事業の位置づけはさすがに私が居た頃とは随分違うとは思います。将来性を考えても、フラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーはこれからのITシステムで益々重要になるデバイスです。先ごろ、IntelとMicronが、フラッシュメモリーよりも1000倍高速でDRAMよりも10倍大容量という次世代メモリー技術「3D XPoint technology」を発表(関連記事 )したように、高速な不揮発性メモリーはサーバーからスマートフォンまで、IT機器に革命的な進化をもたらすと期待されています。

 つまり、半導体メモリー事業は「低成長で成熟したキャッシュ・カウ事業」というよりも、今後もより一層、成長が期待される事業でしょう。東芝社内の状況はOBの私にはわかりませんが、不適切会計が露見して以来、フラッシュメモリーの関係者からは、「あんな人たちとは一緒にされたくない」「悔しい」という声を聞きます。

 今まで会社の利益の大多数に貢献をしていながら半導体メモリー部門出身の社長はいませんでした。不祥事後に「半導体メモリー出身の初めての社長」が誕生したのは皮肉なものです。ガバナンスの改革として、企業経営者の方が社外取締役として経営を監督するそうですが、ご出身の業種が化学、飲食料品、化粧品でどういうことなのかよくわからないな、というのが正直な感想です。

 冒頭に書いた東芝の財務状況、特にバランスシートの毀損状況がクリアになったのか、私にはよくわかりません。今後も紆余曲折があるでしょうし、巨大企業を経営するのは大変難しいことだと思いますが、経営陣から現場の社員まで、できるだけ全員が一体感を持って進めるような企業に東芝が変わることを、OBの一人として願ってやみません。