ワールドテック代表取締役の寺倉修氏
ワールドテック代表取締役の寺倉修氏
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──第1の講座「車載システムで品質トラブルをなくす、設計力向上の勘所」では、以上の7つの設計力を高める方法についてより詳しく解説していくのですね。

寺倉氏:その通りです。車載製品を例に挙げて解説していきますが、ここで採り上げる設計力は車載系に限ったものではなく、普遍的なものです。従って、車載製品や電機製品、産業用機器といった製品の設計者もちろん、金型や工程などの設計者にも役立つ内容です。さらに言えば、これは仕事を始めてから作業するまでの間にやるべきことでもあるため、幅広い社員に役立つ内容だと思っています。

──第2の講座「車載システムで品質トラブルをなくす、設計力を支えるDRの勘所」の内容は?

寺倉氏:7つの設計力のうち、[6]の設計力(議論・検討して承認・決済する場を持ち、有効に機能させられる力)、すなわちデザインレビュー(DR)に絞って講義します。

 7つの設計力はどれも重要で、1つでも抜けがあってはいけません。ただし、このうち[6]のDRだけ、意味合いが異なります。何が違うかと言えば、DRは他の6つの設計力の活動結果に対して議論する場であることです。設計を担当した人は100%大丈夫だと思っても、ひょっとしたら抜けがあるかもしれない。あるいは、まだ心配な点が残っている。こうした場合に、みんなの知恵を借りて抜けを防止する場なのです。

 そういう意味で、DRは他の6つの設計力の上に位置し、最後の歯止めとなります。そして、結果的に他の6つの設計力を高める役割を果たすのです。こうした重要な意味があるために、DRに絞って解説するというわけです。

──ただ、今どきDRを実行している企業は少なくないと思うのですが…。

寺倉氏:確かに、「DRをやっていますか?」と聞くと、DRと呼ぶかどうかは別として、多くが「やっている」と答えます。「どのように?」と聞くと、「集まって議論します」と答える。ところが、続いて「その効果を感じていますか?」と質問すると、「うーん」とうなってしまう人が多いのです。

──なぜでしょうか。

寺倉氏:DRは気づき(技術的な知見)を得る場です。そのために、人を集めるのですが、いい加減に人を集めて議論しただけでは効果は得られない。時間のムダかもしれない。そもそも、中身をよく知らない人がその場ですぐに気づきを見つけられる可能性は低いはずです。

 DRの効果を高めるには、きちんとした工夫や仕組みが必要なのです。議論する対象や実行するタイミングを決め、参加者のみんなが内容を理解して議論に入れるように分かりやすい資料を準備して、参加するにふさわしいメンバーを集める。他に、開催日から当日の運営までの詳細を決めることも大切です。どこで何時から何時間DRを行うのか、誰が司会を担当するのかなどなど。こうした工夫や仕組みを整えてDRを実行すれば、気づきを得られる確率が高まります。こうして得られた気づきは、技術的な価値の高い財産となります。

 そして、最後に忘れてはいけないのは、価値の高いこの知見をきちんと社内に残すことです。つまり、職場に残すことはもちろん、社内に水平展開することが大切です。ここまできちんとやらなければ、期待するようなDRの効果は得られないことでしょう。