私事になりますが、私はこの十年来、神経系統の病気を患っており、右手右足に麻痺があります。日本の神経内科の医者によれば、この病気は原因が特定されていません。投薬により病状の進行を遅らせることはできても、根本的な治療法は無い、というのが実情です。しかも、薬には副作用があり、得失を秤にかけて迷ってしまうのが現状です。

 私の場合も病状は次第に進み、歩行や字を書くこと、コンピュータのキーボード操作もままならないまでになってしまいました。そこで、米国の主治医に相談したところ、米国屈指の病院であるボストンのMGH(Massachusetts General Hospital)の専門医を紹介してくれました。

様々なマシンが並ぶリハビリテーション病院の物理セラピー室
様々なマシンが並ぶリハビリテーション病院の物理セラピー室
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ハイテク補助設備が備えられた室内プール
ハイテク補助設備が備えられた室内プール
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 米国の先進病院とのことでしたので、最新の診断装置を想像していたのですが、実際には何も装置らしきものはありませんでした。ただ、専門医は30分以上をかけて、私の体の動きと筋力のバランスを観察した上で、薬と物理セラピーの処方を出してくれました。医者の説明によると、この病気の治療は、薬とエクササイズをセットにすることで、大きな効果が期待できるというのです。

 ちょっと意外だったのは、この専門医が電子カルテのようなものは使わず、病状を紙にボールペンで記録していたことです。さすがに、薬の処方箋はコンピュータ上で作成し、一番便の良いドラッグストアに直接送られました。

 薬は一般の薬局で購入できるものでしたが、問題は適切なセラピーが受けられる施設です。幸い私が住んでいる町には、有名なリハビリテーション病院WRH(Whittier Rehabilitation Hospital)があり、そこで物理セラピーを受けることになりました。ここでも最初は綿密な検査ですが、専門のセラピストが30分以上もかけて体の動きを調べたうえで、セラピープログラムを作りました。ここでも電子カルテはなく、全て紙とボールペンの世界です。

運転のリハビリテーション訓練用の自動車
運転のリハビリテーション訓練用の自動車
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 さて、実際のセラピーですが、その部屋にはたくさんのトレッドミルやバイセクルのようなマシンが並んでいて、ちょっと見た目には一般のトレーニングジムとあまり変わりません。大きなスイミングプールもあります。驚いたのは、あるフロアには、大型の乗用車が置いてあったことです。クルマ社会のアメリカでは、リハビリテーションで、車を運転できるようにするのが一つの目標になっているようです。