2015年2月に正式に発表されていたIBM社の「Watson」での提携(米IBM社のWebサイトから)
2015年2月に正式に発表されていたIBM社の「Watson」での提携(米IBM社のWebサイトから)
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 2015年7月末、米国では米IBM社がAI関連技術「Watson」の日本市場展開に、ソフトバンクと協力するとの記事が相次いだ。このニュースは、東京で開催されたプレス発表会から起こったらしいが、実は2015年2月に正式に発表されていた(発表資料)。

 筆者は、このニュースを見て既視感があった。実は、2014年12月に米GE社が「Predix」と呼ぶIoTデータ分析ソフトをソフトバンクにライセンスした発表があったからだ(発表資料)。発表資料によると、GE社によるPredixの他社への最初のライセンスとなった事例である。

 これら2つの発表は、米国で歴史が長い有力な技術企業が、ソフトバンクという1980年代にソフトウエアの代理店と技術情報の出版社で始まった新興企業に戦略的な技術を託していることを意味する。

2006年に開催されたソフトバンクグループとVodafone Groupとの発表会の様子

 ソフトバンクは、2006年に英Vodafone Group社の日本の移動体電話通信事業部を買収したことで、ようやく米国で世界的な規模の企業として認識が始まっており、その歴史はまだ10年も立っていない。

 日本には、NTT関連の企業やKDDI、富士通、日立製作所など有力な技術企業があり、ソフトバンクより歴史が長く、各社の研究開発の事業部は世に広く知られている。一方、ソフトバンクの英文サイトを見ても、独自の研究開発事業部の情報はなかなかない。

 なぜ、IBM社とGE社は、伝統的に強みがある日本の技術企業よりもソフトバンクを選んだのだろうか。