米航空宇宙局(NASA)が2015年8月下旬から、無人航空機(UAV、Unmanned Aerial Vehicle)、いわゆる「ドローン」の航空管制システムである「UTM(UAV Traffic Management)」のテストを開始する。UTMは無線通信によってドローンを管理し、ドローンの運航許可を出したり、ドローンが飛行禁止空域に入るのを制止したりする(写真1)。NASAは2020年までにUTMを本格稼働する予定で、日本のドローン利活用論議にも影響を与えそうだ。

写真1●NASAが公開したUTMのイメージ図
ドローンは決められたゾーン(赤の部分)だけを飛行する

 航空関連の規制を司る米連邦航空局(FAA)は現在、商用ドローンの規制を策定中だ。FAAが2015年2月に公表した規制案では、商用ドローンの飛行について「高度500フィート(約152メートル)以下に限る」「日中に限る」「操縦者が視認できる範囲に限る」「飛行速度は時速100マイル(160km)以下に限る」などかなり厳しく制限している。米Amazon.comや米Googleなどが目論むドローンを使った宅配サービスなどは、この規制ではほぼ不可能だ。

 もっとも、FAAの規制が厳しくならざるを得ないのは、現状ではドローンの航空管制システムが存在しないため。逆に言えばUTMのようなドローン用航空管制システムがあれば、商用ドローンの規制を緩和できるようになる。

 米政府としても「ドローンは、農業やエネルギー産業などに多大な利益をもたらす」(NASA Airspace Operations and Safety Program DirectorのJohn Cavolowsky氏)と期待をしており、ドローン産業の成長の芽を摘むつもりは無い。ドローン産業を“離陸”させる上ではUTMが欠かせない存在になると位置付け、官民挙げてUTMの実現を目指す。

無線通信でドローンを監視

 UTMのロードマップなどは、NASAが2015年7月28日から30日までシリコンバレーにある「NASA Ames Research Center」で開催した「UTM Convention 2015」で発表した(写真2)。UTMは、現在も飛行機の監視に使われている「ADS-B」規格の無線通信や、携帯電話網、衛星通信網などを使用してドローンを遠隔監視するシステムとなる。飛行禁止空域などは動的に変更可能とし、無線通信を使ってドローンに伝達する。また、無線通信を使ったドローン同士による衝突回避なども実現可能にする。

写真2●シリコンバレーにある「NASA Ames Research Center」で開催した「UTM Convention 2015」