米IBMがサーバー向けプロセッサ「POWER」の知的財産(IP)を他社に公開し始めたのは2013年8月のこと。まもなく2年が経過しようとしている。POWERプロセッサのIPが公開されることで、IBM以外の企業が独自のPOWERプロセッサを開発したり、POWERプロセッサを搭載するサーバーを開発したりできるようになった。
 IBMのFellowで、POWERプロセッサの仕様のオープン化を推進する米OpenPOWER FoundationのPresidentを務めるBrad McCredie氏は、「OpenPOWERの取り組みは順調だ」と語る。米Googleや米Rackspace HostingがPOWERプロセッサを搭載する「ホワイトボックス・サーバー(メーカー名のないサーバー)」を開発しているほか、独自のPOWERプロセッサを開発する中国メーカーも現れ始めているからだ。McCredie氏にOpenPOWERの現状を聞いた。
(聞き手は、中田 敦=シリコンバレー支局)

――そもそもIBMはなぜ、POWERプロセッサのIPを他社に公開し始めたのか。

 「(集積回路上のトランジスタ数が1年半~2年ごとに2倍になるという)ムーアの法則」が終焉しつつあることに対応するのが目的だ。かつてはムーアの法則に従ってプロセッサの「性能当たりのコスト」は順調に低下していたが、2008~2010年頃を境にその勢いがスローダウンし始めた。

写真●米IBM Fellow 兼 米OpenPOWER Foundation PresidentのBrad McCredie氏

 今後は、プロセッサ以外の部分、周辺チップや基板、ストレージやソフトウエアなどを改善することで、コンピュータの「性能当たりのコスト」を下げていかなくてはならない。そのためには、プロセッサ以外のメーカーとの連携を密にする必要があると考えて、POWERプロセッサのIPを公開した。

 IBMは「OpenPOWER Foundation」を通じて、POWERプロセッサのすべてのIPを公開している。使用料さえ支払えば、誰でもPOWERプロセッサのIPを利用できる。独自のPOWERプロセッサを開発したり製造したりすることも可能だ。

――IBMのPOWERプロセッサに関するアプローチを、米Intelや英ARMのアプローチと比較しながら説明してほしい。

 今のPOWERプロセッサは、「プロプライエタリ(仕様や情報が公開されていない状態)」ではなくオープンだ。米NVIDIAのようなGPU(Graphics Processing Unit)メーカーや、米XilinxのようなFPGA(Field Programmable Gate Array)メーカーがその気になれば、「POWERプロセッサを組み込んだGPU」や「POWERプロセッサを組み込んだFPGA」を開発することが可能だ。

 一方、Intelの「IAプロセッサ」はプロプライエタリなので、他のメーカーが「IAを組み込んだGPU」や「IAを組み込んだFPGA」を開発することはできない。だからIntelは自社でGPUを開発したり、FPGAメーカーの米Alteraを買収したりする必要があった。