かつて政府や大企業でなければ購入できなかった「コンピュータ」を、今や誰もがポケットに入れて持ち歩くようになった。それと同じ変化がこれから、あらゆるテクノロジーの世界で起きる。シリコンバレーでは最近、このような考え方が一般的になっている。

写真1●アメリカ航空宇宙局(NASA)航空研究本部(ARMD)のJaiwon Shin博士
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 「どんなテクノロジーもいつかはエンドユーザーに普及する(Technology Eventually gets to the end user)」。そう語るのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)航空研究本部(ARMD)のJaiwon Shin博士(写真1)。Shin博士が念頭に置くのは、ドローンのような無人航空機(UAV、Unmanned Aerial Vehicle)だ。

 空の交通はこれまで、政府や軍、航空会社といった限られた組織だけが関与する世界だった。しかし最近は低価格なUAVが実現可能になり、米Amazon.comや米Googleといった新規参入者がUAVを使って空の世界に乗り込んで来ようとしている。Shin博士はコンピュータがたどったのと同じように、UAVが一般企業に普及するが自然なことだと見ている。

 それに対応するためにNASAは現在、UAVを対象とする新しい飛行機の運行管理(Traffic Management)システム、すなわちUTM(UAV Traffic Management)システムを開発中だ。いわば航空管制システムのUAV版であり、UAVの航路を管理したり、UAVが飛行禁止空域に入ってくるのを制止したりできる。

 NASAは2015年7月に、シリコンバレーにある「NASA Ames Research Center」で、UTMについて話し合う会議「UTM 2015」を開催した。Shin博士の上記の発言は、この会議で述べたものだ。UAVの台数が爆発的に増えても安全にUAVを管理できるよう、スケーラビリティ(拡張性)の高いシステムを目指すとした。

誰でも水中探索が可能に

 ドローンだけではない。潜水艦の世界でも同じことが起きると説く人たちがいる。米カリフォルニア州バークレーに本社を置くスタートアップ、米OpenROVだ。同社は遠隔操作で水中を探査する「ROV(Remotely Operated Vehicle)」を販売する会社で、製品名は社名と同じ「OpenROV」だ(写真2、3)。

写真2●899ドルの水中探索ロボット「OpenROV」
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写真3●水深75メートルでも活動できる「OpenROV」
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 OpenROVは幅20cm、奥行き30cm、高さ15cmというラジコンカーほどの大きさ。水深75mまで潜水し、3個のスクリューを使って自由に水中を移動できる。電池を使って2~3時間の航行が可能だ。価格は899ドルで、OpenROVの創業者であるEric Stackpole氏は「大学や企業でなければ手が出なかった水中ロボットが、個人にも入手可能になった」と力説する。