2015年7月中旬、中国政府系ファンドのTsinghua Unigroup(清華紫光集団)が米半導体大手Micron Technology社に対し、230億米ドルで買収したい旨を提案したとの報道があった。現時点でこの話はまだ進展していないようだが、この件から、中国政府の半導体産業に対する積極的な姿勢が垣間見えた。

 中国の国家プロジェクト「中国製造2025」において、同国は10の重点分野を掲げているが、半導体はその中に含まれている。半導体関連のポジティブな話題に乏しい日本とは対照的に、中国にとって半導体はこれからの産業、という位置付けなのだろう。

 それぞれの国や地域の抱える事情が異なるとはいえ、1つの産業に対する期待値に大きな差があることに筆者は強い興味を覚える。以下ではその背景を踏まえつつ、日本の半導体産業およびエレクトロニクス産業の今後について考えたい。

国内産業の育成を急ぐ中国

 グローバル企業の多くは中国に巨大な生産拠点を持ち、同国は今や「世界の工場」と言われている。ところが、実績をあげているのは外資系企業ばかりで、国内企業の育成は遅れている。人件費は上昇を続けており、このままでは他の新興国に製造拠点を移管されてしまいかねず、国内メーカーが付加価値を生み出せる実力をつける必要がある。先に挙げた重点10分野には、半導体の他に、工作機械やロボット、鉄道システムや発電設備、バイオ技術や医療機器などを定めており、同国の産業戦略がうかがえる。

 同国の半導体産業についてみると、SMICなどファウンドリー分野ではある程度実績をあげている企業が存在するが、中国ブランドの世界半導体シェアはわずか2.7%にすぎない。これに対し、例えばMicron社の世界半導体シェアは4.5%、DRAM市場に限れば24.6%を占める。同社の開発技術や製造技術を国内企業の育成に活用したいという同国の思いが、今回の買収提案の背景だろう。