最近、組み込み業界の展示会では、展示品がソフトウエア中心となっていて、ハードウエアがあまり論じられることがなくなっていると感じるのは筆者だけだろうか?

 皆さんにとって「ハードウエア」とはどのようなモノを指すだろうか? 電子機器には、ソフトウエアとハードウエアしか存在しないので、おのずとソフトウエアでないものがハードウエアになる。しかし、そもそも「ハードウエア」の定義とは何だろうか。筆者は、「ハードウエア」は目に見えるもの、形のあるものすべてだと考えている。
 著者が考える電子機器のハードウエア構成は、以下のようになる。

▼筐体:一般に言われるケースおよび、内部の取り付けシャーシ。通常、筐体にはフロントパネルとバックパネルがある。
 ・フロントパネル:表示部と操作部(スイッチ群)
 ・バックパネル:各種コネクターやヒューズボックス、電源ケーブル
▼ボード:マイコンや周辺部品、各種の受動部品を実装したプリント基板
▼電源部:通常、100Vの交流から電子機器で使用する電源を生成する。
▼各線材およびケーブル
▼その他

 ハードウエア設計というと、筐体のデザインや設計、パネルにおけるコネクターや表示の配置、電源の取り回しなど多岐にわたるが、本稿では一番のキーとなる「ボード」について述べていく。

ボードは買うもの?

 マイコンの創成期から、その歩みとともに組み込み業界に住みついた著者にとって、ボードは購入するものではなく自分で設計するものだった。ただし最近では、設計しなくても用途に応じて組み込みマイコンを搭載したボードを簡単に購入できる。さらに、それらのボードには既にインターフェースが実装されていて、すぐに使用可能だ。インターフェースは業界標準と称されており、パソコンやスマートフォンに代表されるようなコンシューマー製品に搭載されているものと同じである。これらのインターフェースを利用することで、電子部品(マイコンなど)やコネクター類、ケーブル類も市販品を利用でき、接続可能な周辺機器の選定も簡単になる。

 ボードを準備するための選定方法として、以下のようにインターフェースから決めていく方法が考えられる(ただし、ある程度経験がある場合は必ずしも以下の通りではない)。

(a)必要な周辺インターフェース(入出力情報)を列挙する
(b)上記のインターフェースを備えるマイコンを選定する
(c)同じく、サポートされているドライバーを実行できるOSを選定する
(d)上記の仕様をカバーする、市販品で入手可能なボードを選定する
(e)入手不可の場合は、新規に回路を設計してボードを作製する