前回前々回と、このコラムでは「BtoB(企業向け)ビジネスにも高い戦略性が求められている」という話をしました。最近目立つようになったBtoC(一般消費者向け)からBtoBへの転換を図る企業の中には、「BtoCがダメだからBtoBに移行する」、つまり「既存ビジネスに行き場がなくなったから」という打算的な意識による取り組みが少なくありません。

 一般消費者の生活スタイルや消費行動に直結して業績が左右されるBtoCビジネスと異なり、BtoBビジネスは比較的状況の変化が遅く、一見安定しているように見えます。それに安住してしまい、世の中の変化に気付きにくいという落とし穴が存在しているのです。このため、ビジネスの思考や商慣行が「技術至上主義」「価格至上主義」に陥ってしまうという危険性が常に存在します。

 逆に、納入価格を思うようにコントロールできない状況から逃れようと、これまでBtoBビジネスを手掛けていた企業が、BtoCの商品を開発しようとするケースも出てきています。これはこれで難しい取り組みで、なかなか市場をうまく捉えられないことが残念ながら多いと言わざるを得ません。BtoB的思考では、一般消費者のニーズを捉え切れないことが多いからです。BtoBビジネスを行っている中小企業による下請けからの脱却が難しい一因でしょう。

 「BtoCからBtoBへ」、あるいは「BtoBからBtoCへ」とビジネスの土俵を変える取り組みは、どちらの場合も大きな企業風土の転換が必要になります。それ故に打算的な取り組みではうまくいかず、戦略性が求められるのです。

 以前から指摘しているように、BtoCビジネスでは「ものづくり」から「ことづくり」への流れが顕著になっており、技術開発に加えてビジネス開発の必要性がこれまで以上に高まっています。同様に、BtoBビジネスでも技術力だけに頼った取り組みからの脱却が必要なのです。

BtoBビジネス、モデル再考を迫られる

 それでは、新しいBtoBビジネスを創造するにはどうしたらいいのでしょうか。前回は、これまで絶対的と思い込んでいた「製品やサービスの価格が最重要課題」という発想から抜け出すことが必要だと述べました。つまり、ビジネスモデルの再考です。

 ただ、そうは言っても、よくよく考えてみると「BtoB」という言葉は漠然としてまとまりがありません。「企業間取引」と日本語で考えてみても、業種も扱う商材も多岐に渡っていて、ひとくくりには議論しにくいのです。そこで、今回は「そもそもBtoBとは、何だろう?」という最も基本的なところに立ち返って、BtoBビジネスの特徴を分析していきたいと思います。

 少し考えてみても、企業同士では「原料・材料」を取り引きすることもあるでしょうし、部品や製造装置の場合もあるでしょう。提供するものが有形ではなく、サービスや専門知識だったり、そのための人材だったりするケースもあります。

 IT(情報技術)システムを販売することもあるでしょうし、そのシステムはクラウドベースで提供しているかもしれません。製品開発から流通、マーケティング、組織運営などが密接に絡んできますから、BtoBビジネスとひと口で言っても、何を議論しようとしているか分からなくなりがちです。