今回のテクノ大喜利では、「新時代を迎えるロボット産業と半導体」をテーマに、世界的に急速に熱を帯び始めたロボットの技術開発と産業育成の動きと、半導体産業の関わりについて議論している。半導体の技術開発最前線の動きを追う視点から服部コンサルティングインターナショナルの服部 毅氏に回答を頂いた。

服部毅(はっとり たけし)
服部コンサルティング インターナショナル 代表
服部毅(はっとり たけし) 大手電機メーカーに30年余り勤務し、半導体部門で基礎研究、デバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学集積回路研究所客員研究員等も経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。半導体専門誌にグローバルな見地から半導体業界展望コラムを8年間にわたり連載。近著に「半導体MEMSのための超臨界流体(コロナ社)」「メガトレンド半導体2014ー2023(日経BP社)」がある(共に共著)。

【質問1】ロボット産業の成長は、半導体市場の成長をけん引するインパクトがあると思いますか?
【回答】当面期待できないが、次世代ロボットが人工知能チップを搭載すればインパクトがある

【質問2】ロボット産業の成長は、どのような半導体メーカーに新たなビジネスチャンスをもたらすと思いますか?
【回答】センサ―、パワーデバイス、コンピューティングデバイスを提供するメーカー

【質問3】半導体メーカーがロボット向け半導体事業を育成する場合、戦略策定時に参照できる類似応用市場は何だと思いますか?
【回答】パソコン用マイクロプロセッサー市場、スマホ用アプリケーションプロセッサー市場

【質問1の回答】当面期待できないが、次世代ロボットが人工知能チップを搭載すればインパクトがある


 ロボットに使用される主要な半導体は、一般に、モーターの動きやシステム全体を制御する一連のマイコンやマイクロプロセッサー、 サーボモーターを駆動するドライバーやスイッチ素子、人間の五感に相当する知覚・認識センサ―などである。さらに最近は、ネットワークにつなぐためのRF送受信デバイスなども加わった。しかし、産業用ロボットは、パソコンやスマートフォン、あるいはデジタル家電製品に比べれば、出荷量が少ない。そして、半導体搭載率もはるかに低い“機械製品”である。だから、今までも半導体産業をけん引することはなかったし、今後使用量が増えたとしても価格競争が厳しくなるため、半導体産業をけん引するほどのインパクトはないだろう。

 将来は、日本勢が得意とする、プログラム通りに同じ動作を繰り返し、作業員に替わって単純作業をこなす産業用ロボットよりは、自律的に行動する民生用(サービス)ロボットが成長すると期待されている。そこに人工知能が搭載されるようになれば、状況は一変する。半導体がロボット産業を主導するようになり得るのだ。そうなれば、ロボット産業の成長が半導体市場の成長をけん引することになるだろう。この点については、質問3の回答でさらに触れる。