今回のテクノ大喜利では、「新時代を迎えるロボット産業と半導体」をテーマに、世界的に急速に熱を帯び始めたロボットの技術開発と産業育成の動きと、半導体産業の関わりについて議論している。コンサルタントの視点からアーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏に回答を頂いた。

三ツ谷翔太(みつや しょうた)
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
三ツ谷翔太(みつや しょうた) 世界最初の経営戦略コンサルファームであるアーサー・D・リトルにて、エレクトロニクス産業を中心とした製造業に対する新規事業戦略・研究開発戦略・知財戦略の立案支援、ならびに経済産業省を中心とした官公庁に対する産業政策の立案支援に従事。

【質問1】ロボット産業の成長は、半導体市場の成長をけん引するインパクトがあると思いますか?
【回答】成長には寄与するが、恩恵を受けるプレイヤーは限られる

【質問2】ロボット産業の成長は、どのような半導体メーカーに新たなビジネスチャンスをもたらすと思いますか?
【回答】国や地域の産業集積のレベルが、個々の企業の競争力を左右

【質問3】半導体メーカーがロボット向け半導体事業を育成する場合、戦略策定時に参照できる類似応用市場は何だと思いますか?
【回答】単一解はなく、複数市場からの学びの重ね合わせが重要

【質問1の回答】成長には寄与するが、恩恵を受けるプレイヤーは限られる


 ロボット市場は、確かに成長分野として注目を集めている。しかしながら、用途別に見ると、既に市場が顕在化しつつある基幹系(製造現場でのロボットなど)から、今後の市場形成が期待される末端系(生活やサービスの支援ロボットなど)までを含めて、それぞれで用途ごとに断片化した市場になる点に留意する必要がある。

 さらに技術的に見ると、特定用途のロボットにおいて、半導体に求められる機能の役割は、そこでのシステムアーキテクチャーに依存する。例えば、ロボット内で処理を完結するのか、クラウド側での処理を実行するのかによって、処理系のチップに求められる要件は大きく異なる。また、ロボットにおけるヒューマンインターフェースのあり方によって、センサーやアクチュエーターの要件も大きく変わる。したがって、断片化するロボット市場の中で、半導体市場としてはさらに断片化が進む可能性もある。

 要は、ロボット向け半導体とは、全体で見れば大きな市場であるが、その実態としては個別分散した市場である。したがって、一時のディスプレイや太陽光パネルのように、多くのプレイヤーが何かしらの恩恵を受けるような大きな牽引市場にはならない。ただし、逆に言えば、うまく攻めることができたプレイヤーには成長をもたらす福音となる可能性があるのも事実だ。それでは何がこの市場における競争力を左右するのか、次節以降で考察してみたい。