今回のテクノ大喜利では、「新時代を迎えるロボット産業と半導体」をテーマに、世界的に急速に熱を帯び始めたロボットの技術開発と産業育成の動きと、半導体産業の関わりについて議論している。コンサルタントの視点からアーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏に回答を頂いた。
アーサー・D・リトル(ジャパン) プリンシパル
【質問1の回答】成長には寄与するが、恩恵を受けるプレイヤーは限られる
ロボット市場は、確かに成長分野として注目を集めている。しかしながら、用途別に見ると、既に市場が顕在化しつつある基幹系(製造現場でのロボットなど)から、今後の市場形成が期待される末端系(生活やサービスの支援ロボットなど)までを含めて、それぞれで用途ごとに断片化した市場になる点に留意する必要がある。
さらに技術的に見ると、特定用途のロボットにおいて、半導体に求められる機能の役割は、そこでのシステムアーキテクチャーに依存する。例えば、ロボット内で処理を完結するのか、クラウド側での処理を実行するのかによって、処理系のチップに求められる要件は大きく異なる。また、ロボットにおけるヒューマンインターフェースのあり方によって、センサーやアクチュエーターの要件も大きく変わる。したがって、断片化するロボット市場の中で、半導体市場としてはさらに断片化が進む可能性もある。
要は、ロボット向け半導体とは、全体で見れば大きな市場であるが、その実態としては個別分散した市場である。したがって、一時のディスプレイや太陽光パネルのように、多くのプレイヤーが何かしらの恩恵を受けるような大きな牽引市場にはならない。ただし、逆に言えば、うまく攻めることができたプレイヤーには成長をもたらす福音となる可能性があるのも事実だ。それでは何がこの市場における競争力を左右するのか、次節以降で考察してみたい。