三反田 前田さん、いかがでしょうか。

前田 海外展開を広く考えるならば将来的には、IKEAのように一般向けの家庭用家具で大きく狙いたいというのはありますが、今はまずデザインと品質と価格で、業務用家具でしっかりと足場を築いているという段階です。

 世界という視野で見るときに大切なのは、政府の方針に順応することではないかと思っています。今、お金や人が日本に入ってきているのは、現政権が安定し、そうした方向に動かしていこうとしているからで、政府、民間企業が長期的な計画を立てることができるようになり、プロジェクトが動き始めました。実は、今の円安状況にはもろに打撃を受けているのですが、これは政府の方針である以上ある程度は仕方がない。大切なのはそういう周囲の状況を判断して順応していくことなんです。

 カンボジアに工場を作ったのもその流れに沿ったこと。カンボジアにはよく行くのですが、日本へのあこがれが強いことに驚かされます。中国では、「日本はもう追い越した、日本はもうあかん」とか、ちょっと反日ムードもあったので、東南アジアもそういうところあるのかなと思っていたら、そんなこと全然なくて。日本に好意的なバイタリティーあふれる若い人たちがいっぱいいる。これはすごく刺激的で、いつも帰りの飛行機の中でこれからのビジネスのことをあれこれと考えてしまいます。

三反田 家具の製造販売の面ではいかがですか。2020年に向けて需要の拡大が見込まれているかと思いますが。

前田 そうですね、政府の方針から言っても、2020年まで訪日外国人客が減ることはないでしょう。国内市場では、2018~20 19年がバブル以来の黄金期になるんじゃないかと思います。そこに向けて、ヒト、モノ、カネ、情報を全部揃えないといけない。今は3、4年かけて準備をしている状況です。

 しかし、使える営業担当者はすぐには育たない。生産体制の強化も急にはできない。資金もいきなり貸してもらえるわけではありません。そこで、中期事業計画を作って、金融機関、投資会社にこういうイメージです、こんなビジネスモデルですと説明しないといけないんですね。で、そこでテーマになるのが、世界に対してはどうなのか、10年後、20年後はどうなのかということなんです。

 30年後には、ユニクロの柳井社長がおっしゃったように、世界同一賃金になって、今途上国と呼ばれている国と先進国とで人件費の差がなくなるかもしれません。そうなると工場は二極化するんじゃないかと考えています。一つは、さらに遠く賃金の安い、アフリカや南米のほうに工場を立ち上げる。もう一つは、高いクオリティを持つ日本の職人さんが見直され、国内で工場を持ち、同じ人件費でより良いものを作る勝負になるということです。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)
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