九州工業大学大学院 生命体工学研究科 准教授の安部征哉氏
九州工業大学大学院 生命体工学研究科 准教授の安部征哉氏
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 最適な電源システムを構築するために必要な知識、それは電源の制御理論――。スイッチング電源制御設計の基礎を効果的に学べるセミナー「電源制御と主回路の定式化手法」の講師を務める、九州工業大学大学院 生命体工学研究科 准教授の安部征哉氏はこう語る(セミナーの詳細はこちら)。前回の安部氏へのインタビューでは、制御理論を熟知する重要性を説明いただいた(前回のインタビューはこちら)。今回は、電源分野で昨今関心度が高まるテーマなどを聞いた。(聞き手は日経BP社 電子・機械局 教育事業部)

――昨今、電源分野ではどのようなテーマへの関心度が高まっていますか。

安部氏 電源の双方化に対する関心度が高まっています。双方向電源によってエネルギーの有効活用を実現しようとしたとき、どのように制御するのがよいのかをよく考えねばなりません。切り替えで制御するとか、切り替え時に生じる可能性が高いノイズにどのように対処するのかなど、頭を悩ます技術者は少なくありません。

 双方向電源の最も簡単なタイプは、電力系統の途中にバッテリーをつなげるものです。電力系統からバッテリーに充電するときや、バッテリーから放電するときはいずれも、同じDC-DCコンバーターを使って制御することになります。DC-DCコンバーター1つで、充電と放電を実行できるようにするためにいろいろと考えねばなりません。

――例えば、双方向電源を設計する際にどのようなことに気を付ける必要があるのでしょうか。

安部氏 企業の技術者の方々からよく聞くのが、充電時と放電時で電源に要求されるスペックの差が大きすぎるということです。バッテリーにLiイオン電池を使う場合、安全性を確保するために充電する際には高精度な制御が求められます。その一方、放電の際には高い精度での制御は必要なく、一般的な制御で十分といった具合です。

 充電する際には降圧型として動作し、放電する際には昇圧型として動かすDC-DCコンバーターを1台で済ませようとすると、無理が出てくる可能性があります。いっそのこと、充電時と放電時でそれぞれDC-DCコンバーターを設ける2台構成にする手はありますが、コストの高さや設置面積が増えるといった課題があります。ただし、取り扱える電力を変えずに寸法を小型化したDC-DCコンバーターを使えば、こうした課題を解決できる可能性もあります。