標準という土台がないと高度化できない

 全員のナレッジを蓄積し設計高度化を実現させるためには、設計標準化をしなければならない。現在設計部門は多忙を極めている。新しいことをしようにもそんな時間はないし、そんな気持ちにもなれない。だからまず、高度化のための時間を捻出しなければならない。

 しかし、設計標準がなく仕事をしていると、毎回毎回図面を書かなければならなくて非効率である。さらに、他の案件での工夫や苦労が共有されていないので、同じように悩み、同じ失敗を繰り返して手戻りが起きている。これは、非常に非効率である。苦労や工夫や失敗を共有し、効率的に設計を進めなければならない。

 では、効率化して時間が生まれたら高度化できるのかという、そういうわけでもない。新しいことをしたいと思ったにしても、何が新しいと知るのか、何をもって新しいと認識するか、である。逆説的ではあるが、過去を知っているから何が新しいかを知ることができるし、常識を知っているから個性を認識できるのである。今から打ち破りたい殻(過去に行った設計内容)を知らずして、殻は打ち破れないのだ。そのためにも、過去の設計の工夫を積み重ねた標準を明確にしておく必要がある。

 効率化し、過去を理解し、新しいことを考えて、高度化していく。標準はどんどん変えていくものである。とはいえ、それは結局「属人的なバラバラ設計」と何が違うのかという疑問も生じるだろう。属人的なバラバラ設計にせず、企業としての高度化設計にするためには、設計コンセプトや設計パラメーターの優先順位を明確にすることが重要である。設計コンセプトを守った中でどんどん変更していく。さらに、前回の記事でも触れたが、標準を変更する際に、合理的な理由があるのかをチェックする必要がある。そのためにも、設計を標準化することが、競争力ある製品を生み出す設計高度化の前提条件になる。

設計高度化のために設計標準化が必要
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