ビジネスキューブ・アンド・パートナーズ シニアディレクターの田渕氏
ビジネスキューブ・アンド・パートナーズ シニアディレクターの田渕氏
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 車載電子システムに求められる機能安全規格「ISO 26262」が2011年に正式発行となり、本格的な対応が部品メーカーなどで活発化している。ISO 26262への対応で、特に多くのリソースを必要とし、社内業務の進め方を見直さなければならないのが、ソフトウエアやハードウエアを含めたシステムの開発プロセスである。その中でも特にソフトウエアの開発においてプロセスは重要視されている。

 「技術者塾」において「ISO26262実践セミナー ソフトウエア開発編」の講座を持つ、ビジネスキューブ・アンド・パートナーズシニアディレクターの田渕一成氏に、ソフトウエア開発プロセスをISO 26262に対応させることの重要性や、その際の注意点などを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──ISO 26262への対応は、今なぜ必要なのでしょうか。

田渕氏:私たちは「ISO 26262 実践ガイドブック(ソフトウエア開発編)」を執筆、日経BP社から発行しました。ソフトウエアの開発プロセスや、その中で求められる各種の技法、手法をISO 26262に沿ったものにするために、何が必要かを体系的に学べる解説書です。技術者塾の講座「ISO26262実践セミナー ソフトウエア開発編」では、本書をテキストにして、つまずきやすい部分などを実例を交えながら分かりやすく解説します。

 ISO 26262への対応では、従来のソフトウエア開発では必要なかった特別なプロセスを追加して実施しなければならないと思っている人が少なくありません。しかし実際には、ISO 26262への対応の有無にかかわらず、ソフトウエアの機能安全を確保するために本来は実施すべきことが簡潔に要求されていると考えた方がよいのです。

 つまり、ISO 26262は特別なものではありません。そういう意味では、本書はソフトウエア開発に必要なことをもう一度考えてもらうためにも有効な内容です。この機会に、ISO 26262を通じてソフトウエア開発のあるべき姿を考えてみてはいかがでしょうか。

──ソフトウエア開発プロセスをISO 26262に対応させることは、今後ますます重要になるのでしょうか。また、そうなるとしたら、その理由(背景)を教えてください。

田渕氏:ISO 26262が2011年に発行されて既に4年が経過しようとしています。ISO 26262自体も次の改版が予定されています。一方で、車載システムの開発を取り巻く世の中の状況も目まぐるしく変化しており、安全を考慮すべき範囲が広がっている上に、セキュリティーを考慮することなども新たに要求され始めています。

 市場からの要求がいかに変化しても、ソフトウエア開発プロセスをISO 26262に対応させることは重要になる一方で、決して、軽視することはできません。この点で、先の通り、本書にはソフトウエア開発に本来求められることを多く記載しました。従って、本書の内容は、目まぐるしく変化する世の中の要求に対応する上でも土台となり得ます。

──ソフトウエア開発プロセスをISO 26262に対応させる上で、キーポイントを教えてください。

田渕氏:本書にはいくつかの事例を掲載していますが、まずは自分が取り組んでいる活動に照らし合わせて考えてみてください。その上で、なぜISO 26262がこのようなことを要求しているのか、その要求に従うとどのような効果が得られるのか、さらに、それをもっと効率的に実施するにはどうすればよいのか、といったポイントを考えながら学ぶと習得が早いと思います。

──「技術者塾」では、どのようなポイントに力点を置いて説明する予定ですか。また、そこに力点を置く理由を教えてください。

田渕氏:本書では、ISO 26262の「Part6 ソフトウエアレベルの製品開発」において要求されている各種技法や手法について、簡単な解説を付けて記載しています。しかし、紙幅の都合もあり、適用時の考慮点まで詳しく書くことができていません。技術者塾のセミナーでは、書籍では書き切れなかった適用時の考慮点などについても触れていきたいと思っています。

──想定する受講者はどのような方ですか。また、受講者はどのようなスキルを身に付けることができますか。

田渕氏:ISO 26262の対応にこれから取り組む人はもちろん、これまでISO 26262の対応を進められてきた人にとっても、今後のヒントになればと思っています。本セミナーを受講することで、ISO 26262対応の勘所を少しでも持ち帰ってもらえれば幸いです。